仙国 11
そのあと、続いてアニはトーゼツ達から仙国に伝わる神話を聞いた。
仙人とは、人知を超えた存在。それらには二種類いる。生まれながらに神の如き力を持つ者たち。もう一つはあらゆる知識を掴み、多くの技術を身に着け、全ての修行に耐え抜くことで人の身を超えた者たち。そして彼らはこの地とは別の世界に住んでおり、そこで世界を回しているとされている。
そんな仙人たちも、やはり根源は人。自分の利益のみを求めて争い、時には殺し合いをしたという。
しかし、その仙人にも王の如き存在が現れる。それこそが仙国の王であり、仙界の覇者。
天玉仙帝である。
彼は全ての仙人の中でも果てなき力と深淵を超えた知識で仙界を支配していたという。だが、天玉仙帝は独裁者となるために支配者になったのではない。秩序を生み出し、法を敷くことで争いの絶えなかった仙界を平和にさせることが彼の目的だったのだ。
平和になった天玉仙帝は、次に地上を眺めた。
そこは真面目に労働する者たちもいれば、欲に飢えて罪を犯す者たちもおり、まさに極楽浄土のような仙界から見れば阿鼻叫喚の地獄であった。
それを憂いた天玉仙帝は地上に降り立ち、人々を導くことにした。
仙力を用いて食物の育つ土地に変え、生命溢れる世界に変えた。そして人々を仙力によって不老不死を与え、仙界に負けない世界へと変革したという。
「これが仙国に伝わる神話だけど、実際、何処から何処までが本当のことか……」
「多分、半分ぐらいは本当かもしれないけど」
そのようにトーゼツの言葉に反応するアナ―ヒターであった。
術聖という、魔術師の頂点に立つ者の一人としてテンギョクというのは興味のそそられる研究対象だ。仙界というのは実在するのか?仙人とは何なのか?そして彼らの使う力は魔力と何が違うのか?
まだまだアナーヒターは若いとはいえ、エルフという長命の種族。百年近い年月を生きる中で何度もこの問題について考えてきた。しかし、答えらしきモノが思いついたことさえない。
しかし、アニはもう少し、一歩先──いいや、十歩先ぐらいには考えついていた。
(仙界、ね。もしもテンギョクレベルの存在、つまり仙人が複数いるのであれば、新たな世界を作り上げることが出来るかもしれない。と言っても、宇宙開闢レベルじゃないでしょうね。上手く創れて星一つぐらいの大きさだろうけど──)
問題は仙人というのはどのようなモノなのか、ということだ。
(多分あれは想いの力によって強化された人間の事でしょう。となればこの世界の神とあながち何も変わらないのかもしれないわね)
人々の恐怖、敬意、崇拝から発生した想いの力。それらが人の指向性によって形を変え、具現化したのが神々。では、その想いの力が人に向けられればどうなるだろうか?神のように恐れられ、敬意を現れ、崇拝される人間。きっとそれが仙人の正体。
(だったらアナトとさほど変わらない。でも、それだけじゃああの力の正体は説明できない。もしかして、テンギョクが、この世界の──)
とそこまで思考が回っている最中、トーゼツが話を進めようと口を開く。




