仙国 8
これまたテンギョクは返答に分かっていたようで、しかしトーゼツの時よりもがっかりした様子ではなさそうだ。やはり、彼の欲しい人材はトーゼツのようだ。
「今回は諦めるとしよう。しかし、気が変わったらいつでも我のもとに訪ねて来ると良い。快く仙国は君たちを迎え入れよう。それでは──」
テンギョクは謙った態度を止め、仙国の王として相応しい姿へと成る。
「話が変わるのだが、君たちはどうしてここに来たのかな?冒険者連合と列強諸国の会議は無事に終わったと聞いている。我々、仙国の冒険者連合への対応も既に伝えている。君たちが今、このタイミングで仙国に赴く理由など無いと思うのだが?」
そのように尋ねられて、トーゼツはここに来るまでの経緯を軽く話す。
アナトから任務を与えられ、外界の者たちと接触をした事。彼らから次にヤバいのは仙国であると聞かされたということを──
「ふむ、そういうことであったか。外界の者は信用出来ないが、彼らの力は本物だ。それにアフラとの契約でそのような助言を寄越したとなれば、信頼性の高い情報と見て良いだろう。ライセイよ、この情報を他の四方星と軍部に伝来せよ。また、変な混乱を招く可能性があるため、この情報は明確な事が分かるまで上層部のみの機密とする」
「了解です、仙帝様!」
ワンウーはテンギョクから命令を受け取ると、すぐさま消えていく。一瞬、これは転移系の魔術か?と思ってしまう。のだが、実際は三人が捉えきれないほどの速さで、まさにそれは音速を超えていると思えるほどのスピードで立ち去っていったのだ。
「今すぐに出来る対応はこれぐらいか。他にも国内における厄災に関する動き、黒いローブの者達の目撃情報、メイガス・ユニオンの活動記録などの情報収集をしておきたいが──のちほどでも問題はなかろう」
テンギョクは頭の中でトーゼツから聞いた事をまとめて、そこからやる事をリストアップ。そして優先事項だけを取り出し、どんどん情報整理していく。
「これでやるべきことは決まったな」
頭の中が落ち着くと、テンギョクの意識はトーゼツたちへと再び向けられる。
「放置して悪かったな。さて、君たちはこれからどうするのかな?」
「一旦、このまま首都であるコーゲンミョウラクへと行き、首都を中心に黒いローブの集団に関する情報収集を行おうと思ってたんだけど」
「であれば──」
パチン、とテンギョクは指を鳴らす。その瞬間、世界が光の速さで動き出す。風景は次々と移動し、稲の広がる南部の西を越え、いくつのかの川を通り、あらゆる街を過ぎ、そして気づけばそこは仙国の首都であるコーゲンミョウラクに居た。
トーゼツ達が立っているそこはコーゲンミョウラク、その中央にあるテンギョクの住居であり、政治が行われる場。そしてこの国で最も美しく、煌びやかな場所──霊霄殿であった。




