仙国 5
こうして昼食を取りながら三人は疲労した体を休ませていると──
「おっと、この気配は──?」
トーゼツは突如として自分たちが向かっている仙国の首都方面から強い気配を感じ始める。いいや、この気配事態は仙国に入ってからずっと感じていたモノだ。その気配がどんどん濃くなってきていると言った方が良いかもしれない。
アナーヒターも、ミトラもそれに気づく。そして、その気配の正体にある程度、察しているようだ。少し警戒はしているが、何か行動することもなく気配について強い疑問を抱くことはなかった。
「えっ、ナニコレ?」
しかし、アニはこの気配を知らないようだ。
「これは──調和神アフラに似た力……!」
アニはすぐさま悟る。この力であればこの世界に属さない、イレギュラーであり、異常である外界の者の自分ですらも殺せる可能性のある力であると。
「何をそんなに警戒してるんだ?」
トーゼツはこの気配の正体が知っているというのもあるが、アニがミトラレベルの最強であり、調和神アフラであっても消滅させられるほどの存在と知っているからこそアニの反応に少し驚いていた。彼女がこれほどまでに警戒するほどには、この気配の正体は強いということに。
「トーゼツ達はこれを知ってるの?」
「まぁ、仙国に来たら常識っていうか──」
「誰しもが経験するわよね」
「前に任務で来た時も転移前に冒険者ギルドに訪れて私が来るのを待ってたらしいし、今回もそういうことじゃないの?」
この三人の態度、一体、何がこちらに向かっているの?
珍しくアニが困惑している中、どんどんあの気配は強くなり、そして四人の前に現れる。
それは二人の男。しかしこの圧倒的存在感を持っているのは片方の男からのみ発せられているモノであった。そして間近で見てアニは改めて理解する。やはりこれは外界の者をも凌駕しかねないほどの力であると。
「トーゼツ、アナーヒター、ミトラよ。久方ぶりである」
それは仙国の王であり、冒険者ギルド連合、東方支部長を務めている天玉仙帝であった。
「「「お久しぶりです、仙帝殿」」」
三人は頭を下げ、丁寧にあいさつをする。もちろん、王ということもあるが東方支部長ということは自分たちの上司にあたる人物。軽く砕けた挨拶など出来ない。だが──
「それほど改まった態度を取らなくてもよい、ここは非公式の場。そして我から君たちに会いに歩いて来たのだ。ここは対等に話そうではないか」
とテンギョクが言った瞬間だった。
「んじゃ、遠慮なく。久しぶりだな、テンギョク」
あんなに丁寧だったのが嘘だったかのように、トーゼツはまるで友達と話すかのような口調になる。またアナーヒターもミトラも、トーゼツ同様に重々しい雰囲気から、軽い態度を取り始める。




