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仙国 4

 その後、トーゼツ達は疲れているミトラのために休憩をしていた。


 今のところ、人とすれ違うことは無かったが、誰かが来ないとも限らない。往来の邪魔にならないように道の端の方で座って、水と一緒に包子(パオズ)を食べていた。


 包子パオズの中には豚肉が入っており、携行食としても仙国でも人気の食べ物である。また腹持ちの良く、一、二個食べるだけでかなりお腹が満たされる。また、今回はもう冷めてしまっており、出来立てではないのだが、それでも口の中に広がる肉汁はとても舌を幸せにする。


 「やっぱりいつ食っても美味いな!この肉がギッチリ詰まってる感じ!仙国に来たら絶対に一回は食っとかないとな!」


 「本当、トーゼツは好きだよね。はい、もう一個、おかわりあるよ」


 「おっ、サンキュー!」


 トーゼツは持っていた包子(パオズ)最後のの一欠片を口の中に放り込む。そしてアナーヒターからもう一個、新たな包子パオズを受け取り、美味しそうに食べ始める。


 「ミトラも追加でもう一個、どう?」


 「私は、もう良いかな」


 ミトラの表情は少しはマシになっている。が、完全に疲労が消えているわけではない。包子パオズのおかわりをしなかったのも、お腹がいっぱいになったわけではない。空腹感よりも疲労感が上回っている故にいらないと言ったのだ。


 やはり野宿などではなく、一度、街まで行って宿屋などでしっかりベッドの上で、数日間休む必要gありそうだ。しかし、どれだけ頑張ってもここから大きな街は三日はかかるだろう。


 村などで民家に泊めてもらうなんて事も悪くはないのだろうが……やはり、経験上、村社会と言うモノは外から来た者を快く受け入れることは少ない。食料の補給ぐらいなら許されるだろうが、金を払っても泊めてもらえる家はあまりない。


 ミトラは地面に少し横になり、身体と脳を休ませ始める。


 「ねぇねぇ、私にも分けてくれない?」


 そういってアニはトーゼツに向かって「あーん」と口を開ける。しかし、問答無用でトーゼツはパクリ、と持っていた包子パオズを食べきってしまう。


 「だから前に食料補給時に寄った村でお前も買えばよかっただろ?」


 「いやぁ、私はこの世界のお金を持ってないからなァ。もちろん、金目のモノなら簡単に生み出せるんだけどね」


 そのように言うアニの右手にはいつのまにか金が握られており、ジャラジャラとまるで噴水のように溢れ出始める。商人にとっては夢のような状況であり、誰しもが眼をギラギラにさせるような光景だ。しかし、トーゼツ達は全く動じることはなかった。


 「でも生み出したモノで取引するのはネイコス達に絶対に止めろって言われてるからさァ。アイツらと戦うってなったら面倒だし──」


 「そりゃそうだろ。お前はこの世界経済を狂わせるつもりか!」


 「いや、だから使わなかったじゃん!だからさァ、良いよね?私にも分けてよ!」


 アナーヒターとトーゼツはそれでもアニに包子パオズを渡すことはなかった。

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