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仙国 3

 二人の感情とは裏腹にアニはとても嬉しそうに笑いながらアナーヒターの言葉に答える。


 「そりゃあ、私がトーゼツとアナーヒターの事が大好きだからさ!二人と一緒に居られるのはとても嬉しいことだし、最近は退屈してたしね!!」


 こっちは調和神アフラが消滅して、神都も乗っ取られて、色々と大変だというのに、『退屈してた』?暇人はラクそうで羨ましいなァ!などと思いはしても決して言わないトーゼツであった。


 「ひどい事考えるなぁ。黙ってても、トーゼツのの考えてる事、なんとなく分かるだから♡」


 (コイツ、直接脳内に!?)


 表情に──出ていたかもしれないが、そんなあからさまな態度を取ったつもりはない。もしかしたら本当にトーゼツの頭の中を覗いたのかもしれない。人知の外からやって来た彼女であれば、魔術を使わずに可能かもしれない。


 「それでもネイコスは介入しないって言ってたじゃないか?お前が退屈してるかどうかは知らないけど、この世界の者じゃないアンタじゃ傍観者として行動を徹底すべきじゃないのか?」


 アナーヒターは次にそのような疑問を投げかける。確かに、彼女の言う通り、調和神アフラのように緊急事態が発生しない限り出しゃばってくる事はないという話をネイコスがした。なのに、アニはここまで来るのにずっと一緒だったではないか?


 「あ~あ、そういえばアイツ、そんな事言ってたねェ。でも、同じ外界の者(アウトレンジャー)と言えどネイコスと私は同じ世界から来たわけじゃないし、仲間じゃないよ。調和神アフラとも契約はしてない。だから冒険者ギルド連合を助ける義理はないそれに──」


 その一瞬──ほんの一瞬だった。


 笑顔だった彼女の表情から冷たいモノが流れ出す。


 それは言葉では説明しにくい、ナニカ……


 「ぶっちゃけ、この世界がどうなろうと知ったこっちゃない」


 その声は彼女の心の底から出る本音であった。


 厄災や狂気に似ている、が明らかに異なっている。


 あれらはまだ理解の範囲内。人の恐怖する想いから生まれたそれらは、結局は人が予想する以上の域は出ない。しかし、彼女は違う。


 周囲の凍ったかのような空気にアナーヒターとトーゼツの体が動かなくなる。とてつもない不安と、どうしようもない絶望感が襲い掛かり、それらが二人の心を支配する。


 「君たちも……飽きたら見捨てることになるからせいぜい頑張って…ね?」


 二人はその言葉に声が出ない。


 「…………まっ、今はとにかく目的地にさっさと行こう!!」


 アニは再び柔らかい表情に、ふざけた声色に戻り、脚の止まったトーゼツ達の前を歩き始める。


 (やっぱり……アレはネイコスとも相容れないナニカ、か)


 アナーヒターは再認識させられていた。


 ネイコスは極力、手を出さないが確実にこちらの味方だ。だが、彼女は自分で言っていた。自分は調和神アフラとは契約していない身であると。であれば、敵になる可能性を持ち、どういう行動を取るか分からない。


 (いざとなったら殺せるようにしとかないとな)


 アナーヒターはアニを改めて警戒対象とするのであった。

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