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仙国

 東方の大国──仙国、世界で最も広い領土、大きい人口、高い経済力を持つ国だ。


 広い国であるため、北と南、西と東で地理や環境が大きく異なっている。


 西には砂漠が広がっており、過酷な環境である。しかし西方諸国と貿易するためにはこの砂漠を越えなければならない。そのため商人たちが休めるための村が砂漠には点在しており、旅をする冒険者なども利用する重要地点となっている。


 北はヒョウホク平野という大きな平野が広がっており、夏には涼しい風が吹く心地のいい場所である。そのため金を持つ権力者や商人などが避暑地として利用する場所でもある。しかし、冬になると常に大地が凍った雪の大地へと変貌する。またエルフ至上主義を掲げている北の大国セレシアと国境線がぶつかっているということもあり、仙国軍の駐屯地が国境に沿って設置されている。


 南西には世界で最も大きいと言われてるコートー山脈が聳え立っており、人が住むには適さない環境だ。しかし、コートー山脈から流れているジュウオウ河は最大級であり、東方諸国のライフラインとなっている。


 東と南の方は作物の育つ肥沃の大地となっており、人間が活動しやすい気候ということもあり人口集中地である。また海に面している土地でもあり、貿易港などもあり、多様な文化が混じった都市が多い。首都も南部に存在しており、最も仙国で栄えている場所は南部と言って良いだろう。


 このように西は砂漠に山脈、北は凍土と過酷な環境で囲まれているというのもあり、数千年前まで他国との交流が少なかった。ゆえに調和神アフラを主神とする世界神話ではなく、スールヴァニアのように独自の神話や文化がある。そのため、まだこの国では一部の土地神や地方神が居るともされている。



 そこは仙国の南部の西、砂漠に近い街であるサイホウと呼ばれてる街にトーゼツたちは赴いていた。


 街、とは呼ばれているものの実際には街レベルに達せるほど人口もなければ、舗装された道はなく、街灯もない。では、どうして街と呼ばれているのか?それは歴史に残っている、かつてこのサイホウを通った旅人の言葉から来ている。


 その旅人は言った、『稲の街のようだ』と。


 そこに広がっているのは田んぼである。首都から西に離れたサイホウは仙国を支えていると言っても過言ではないほどの稲が取れる場所なのである。それゆえに人口も少なければ経済力もないこの場所が首都の次に重要な地点と呼ばれている。


 今は収穫の季節のようで黄金にも見える稲が風になびき、それがとても美しい風景を生み出してる。


 「しかし、ようやく砂漠を超えてここまで来たな」


 トーゼツはそう言いながら、まだ乾きが残っているようで革袋を取り出し、ゴクゴクと水を飲みだす。それが今にも飲み干してしまいそうな勢いで。


 「それでもここから先は田んぼしかないし、この景色にも慣れてくるよ。砂漠の砂の風景にすぐに見慣れたようにね」


 そのようにアナーヒターは彼のセリフに反応する。

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