外界の者 16
「さて、それではどうしてここに来たのか。ある程度、察しているが一応、説明してくれ」
そのネイコスに言われ、トーゼツが代表してこれまであった事を三人に教え始める。
厄災の核の事。そして核を吸収し、厄災の力を操る黒いローブの集団の事。メイガス・ユニオンがそれらと裏で繋がっていた事。そして……調和神アフラが消滅し、神都崩壊。現在は厄災侵蝕都市と呼ばれ人が寄り付けない場所になっていることを。
「──それで、アンタらがこの切羽詰まった状況から切り替えれるキッカケになるんじゃないかということで尋ねに来たんだが……」
「了解、そこまで分かれば良い」
長い説明だったためか、トーゼツは一気にコップの中に入っていたお茶をごくごくと飲み干す。
「さて、ぐだぐだと話すのは私の領分ではない。単刀直入に言おう。我々は手助けはする。だが、仲間にはならない。基本、調和神アフラと同じ対応をさせてもらう」
「えっ!?」
ミトラは思わず声をあげてしまう。
ここには必ず我々の味方になり、冒険者ギルドを助けてくれる者たちがいるという話だった。というのに、調和神アフラと同じ対応?それはつまり傍観者ということではないか。
「やっぱり、そうなるわよね」
アナーヒターはこの回答を予測していたようで、慌てることはなかった。
「アンタ達はこの世界の住人じゃない。だから、調和神アフラのように人間社会に大きく介入することはない。そう前々から言ってたものね。でも、今はそれどころじゃないんじゃない?調和神アフラは死んだ。冒険者ギルド連合本部は大きな痛手を負った。世界各国、列強諸国は自国の利益だけを求め、黒いローブの集団は今も何処かで暗躍してる。最悪な場合、この世界は滅ぶわ。それでもアンタたちは介入をしないっていうの?」
そのアナーヒターの説得の事を聞いてもなお、彼らの様子に変化はない。更に続けてアナーヒターは説得しようと試みるが、すぐさま開けかけたその口を閉じる。やはり、彼らの表情、雰囲気は全く動じていない。これ以上、何を言っても彼らの意見、気持ちを変えることは不可能のようだ。
「さて、分かってくれたかな?私たちも何も目的なしにこの世界に居るわけではない。色々とこの世界でやるべき事、任務があるのでな」
「それでも手助けはするって言ったし、何もしないわけじゃないんだろ?」
「もちろん、全力でサポートはする。それが調和神アフラとの契約だったからな。本当にヤバくなったら戦いにも出るとしよう」
戦力増強というわけではなかった。が、どうしようもなく追い詰められてしまった時に発動する、どんな状況でも逆転させてしまうような最強の切り札を手に入れたと考えれば良いのかもしれない。
これでアナーヒターの言っていた最悪、世界の滅亡は完全に回避されたと言っても過言ではない。




