刃の厄災 13
トーゼツが空間に出来た穴から取り出すのは、一本の杖。
それには、綺麗な色の石が埋め込められており、美術品と言われても遜色のない造形であった。しかし、知識のあるものであれば、すぐに理解できる。
埋め込められているのは決して宝石などではない。魔力伝導の高い鉱石、またモノによっては魔力量を増幅させる、魔力を熱や光と言った別のエネルギーに変換させる効果を持つ特殊な石。いわゆる魔鉱石である。
トーゼツはその杖に魔力を送り込むと、一気に彼が纏っていた魔力量が増大し、空中にいくつもの魔法陣が展開される。そして、展開された魔法陣から一斉に、魔力が弾丸のように射出されていく。
魔術ではない、単純に魔力エネルギーの塊。ゆえに、その威力は込められた魔力の総量によって大きく変化する。
本来のトーゼツの魔力量であれば、中堅レベルの冒険者ならな、問題なく防げるほどの威力であっただろう。しかし、彼の魔力量は杖によって増幅されている。
「魔力弾にしては異常な威力だな。だが―」
トーゼツの相手は決して中堅レベルの冒険者ではない。神から生まれた厄災である。
空中で腰をひねり、腕を回し、態勢を変えながら向かってくる魔力弾を剣ではじいていく。そのまま厄災は落下位置をトーゼツの頭上へと狙って落ちていく。
「ふんッ!」
剣の攻撃範囲内まで落下した厄災は、勢いよく落下速度に体重、魔力全てを乗せた剣を勢いよく振り下ろしていく。
「くッ!」
ギリギリの所でトーゼツは横に避けて回避する。
厄災の剣は大地をバキバキ、と強く割り、まるで隕石でも降ってきたかのような衝撃を生み出し、クレーターを作り出すのであった。
そのまま剣を素早く持ち上げ、避けたトーゼツへ追撃しようとする。しかし―
「ッ!?」
そこに、まるで見えない壁があるような……ともかく、厄災の追撃の剣は、キンッ!と何かがぶつかる音を立てる。そして、剣の何かにぶつかった衝撃が自分に跳ね返り、ノックバックを起こし、態勢を崩すのであった。
(何が……いいや、奴だな!)
刃の厄災はこれが何者による結果なのか、すぐさま理解する。
それは、アナーヒターである。
厄災の動きに合わせて、遠距離から防護系の魔術を発動させたのだ。
そして、それでは終わらない。
相棒を信じていたトーゼツは、事前に防護壁が張られると分かっていたようだ。すぐさまこれまで以上の量の魔力を杖に送り、その莫大なエネルギーを纏った杖で思いっきり殴りかかろうとする。
態勢が崩れている今、剣で防ごうにも間に合わない。
鎧の上から、さらに魔力を纏うことで防御力を高めて身を守ろうとする厄災。それでもなお、その一撃は、受け止めきることが出来なかった。
ボンッ!と爆発でもしたかのような強い衝撃と魔力が体を震撼させ、後方へ数十メートル吹っ飛ばされる。
(魔力増幅では説明できない威力!埋め込められた魔鉱石の効果か!!)
再び態勢は崩れ、杖が当たった箇所を中心に鎧にヒビが入り、パキパキと割れていく。




