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外界の者 13

 現れたその女は魔術師のような格好をしており、とんがった独特の帽子を被っている。だが、それ以上に彼女の最も大きい特徴は赤と青の混じった派手な髪色と、両目に黒眼まなこは見えず、その代わり五芒星が浮かび上がっていた。


 「おや、だれかと思えば、トーゼツとアナーヒターに……剣聖のミトラじゃん!久しぶり〜!!」


 心の底から嬉しそうで元気に声をあげるその女は、しかし二人は「コイツ…少しはテンションを下げてくれ……」という気持ちを抱くのであった。今のところ、ポットバックのようなヤバそうなキャラではなさそうだが……まぁ、何も理由もなしにこのような反応をしているわけでないはずだ。


 それよりもミトラは気になっている事があった。


 「えっと、私はあなたのことを知らないんだけど……どうして私を知ってるの?」


 二人に意識が向いていたその女はアナトの方へと向き、知らない言葉で返す。


 「この世界のアカシックレコードから、ね」


 アカシックレコード……ミトラはそれが一体何を指す言葉なのか、理解できなかった。


 「さて、玄関で話すのもなんだし、ロビーで話そうよ!」


 そう言われて三人は屋敷の中へと入る。やはり外見に伴った、広い空間がそこには広がっていた。だからこそ、ミトラは部屋の節々と見て再び驚き、大きな疑問を抱くことになる。


 綺麗すぎる。


 かなり広いロビーだが、一切埃や砂といったものが感じられない。屋敷にはまだいくつもの部屋があるはずだが、それら全ての部屋がこれほど綺麗な状態を維持しているとなればかなりの労力がかかっていることだろう。だからこそ、貴族や王は使用人を数十人も雇って毎日掃除をさせるのだが、この屋敷にはそれら使用人の影はない。


 どうやって維持しているのか?屋敷の住人である女は魔術師のようなので、もしかした何かしらの魔術を用いて掃除しているのかもしれないが……。


 「とりあえず、そこで座ってて良いよ!」

 

 そうして女が指をさす方向には客人をもてなすためか、ふかふかのソファー二つとその間に大きなテーブルが置かれていた。三人はそこに座り、テーブルを挟んだ向かい側のソファーに女が座る。


 「さて、もう二人はもう呼んでるからもう少しで来ると思うんだけど、お茶でも飲む?」


 そう言ってパチン、と女は指を鳴らす。すると、テーブルの上にはいつのまにかティーポットと三人分のカップがあった。ミトラはカップを手に取る。魔力具現化によって生み出した道具……ではなさそうだ。


 魔力具現化はかなり高度の技術だ。自分の脳内に浮かんでいる道具、形を立体に捉えたうえでその用途に使えるようにしなければならない。例えば剣を具現化させるのであれば、人が斬れるぐらいには刃を鋭くする、今回のようにカップにするなら飲み物が溢れないうえに、ある程度の耐熱性を持たせないといけない。


 ある程度、具現化した物を生み出せるようにするには訓練が必要だ。ティーカップを具現化できるように訓練する者なんてこの世にいるのだろうか?そもそも、このティーポットも、カップも魔力具現化による魔力の痕跡が確認できない。


 つまり、魔力ではない別の何かしらの力でこれらの道具を一瞬で生み出したことになる。

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