外界の者 12
そうして山岳地帯特有のの多い道を歩いて数十分。
そこは人の住む高原からかなり離れた、まさに獣や魔物の多い危険な場所。すでにそこは人の通る道ではなく、獣道ですらない荒れた通り。人の生活領域ではないそこを過ぎると目の前には──
「ここが、アイツら活動拠点か……」
トーゼツは見上げる。人が住む気配の中この場所にぽつり、と明らかに雰囲気に似合わない立派で大きな屋敷が建っていた。トーゼツとアナーヒターはあまり疑問に思っていないようだが、ミトラはどうやってこんな場所に屋敷を建てることがでいたのだろうか?と考えてしまう。
これほどの大きい屋敷であれば、人手がいるだろうし、材料だって運び混む必要がある。しかし、ここまで歩いてきたから分かる。決して材料を運べるような道はなかったし、人里から離れたこの場所に雇われて大きな屋敷を建ててくれる人なんているのだろうか?
……いいや、もしかしたら金に物言わせれば不可能ではないのかもしれない。相手はアナトレベルの強者ということだったし、その力でかなりの財産を築き上げて、それでこの屋敷を造ったなんてことも想像出来る。
だとしても、どうしてこんな場所に屋敷を建てるのか?
ミトラの頭の中であらゆる疑問がぐるぐると巡り、どんどん相手がどのような者たちなのかが掴めなくなってくる。
そして気づけば三人は屋敷の敷地内に入っており、庭を過ぎて玄関のドアへと到着していた。ドアもまた木製なのだが、まるで一流の彫刻家が彫ったような美しいデザインが施されたドアであった。
「さて、ノックするぞ?」
トーゼツは後ろにいるミトラ、アナーヒターに声をかける。心の準備はできているとトーゼツの言葉を肯定するように頷いて反応する。
コンコン、と木特有の乾いた音が響く。
これくらい広い屋敷だ。住人が玄関から離れた部屋にいるのであれば、もしかしたら出てくるのに一分ぐらいかかるかもしれないな。そのようにトーゼツは思っていたが、意外とノックに対してすぐに反応が返ってきた。そして、それは斜め上の反応であった。
『すまん、チャイム鳴らしてくれ!』
とドアの向こうから聞こえてくる女の声。
ミトラは聞いたこともない声であった。が、トーゼツとアナーヒターは「やっぱりアイツらか……」という反応と共にノックしてるんだから、出てこいよ!どうしてわざわざチャイム鳴らさないと出てこないんだよ!?という気持ちが顔に出ていた。
ちゃんと心の準備をして、その上でノックしたのに──
トーゼツは周囲を見渡し、右手側の壁にチャイムを鳴らすためのボタンを見つける。
「んじゃ、気を取り直して」
そう言ってトーゼツはボタンを押す。するとビーッ!と自然では決して聞くことはない、電子音が響く。
『はいはい、出ますよ〜』
そうしてガチャリ、と玄関のドアを開けて出てきたのは一人の女性であった。




