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外界の者 10

 テンギョクがこの部屋に入ってきて五分も経っていない、なんなら二分も無いかもしれない。なのに、目的は果たせた?一体、どういうことなのか?


 アナトはテンギョクを止めようとするのだが、彼は手に持っている札に魔力を込め、転移の魔術を発動させる。最後、彼の目線はニルへと向けられる。それはこれまで話し合いの中で見せてこなかった、まるで見下しているというか、敵と認識しているような眼であった。


 そして次の瞬間には、転移によってこの場からテンギョクは消えていた。


 三人はあっという間に去ってしまったテンギョクに呆然としていた。ニルは相変わらずテンギョクに対して興味がなさそうで、彼女の視線は何故かずっとアナトに向いていた。しかもニッコニコの笑顔で。だがそれに対し、アナトの表情は複雑なモノであった。


 テンギョクは言っていた、目的は果たせた……。その言葉が彼女の頭の中でこだましていた。


 「ちッ、アイツの考えていることは分からん。やはりテンギョクは要注意人物だな」


 テイワズもまたあのように自分の目的でしか動かないテンギョクが冒険者ギルド連合内部に所属していることに面倒だなと感じて、しかめっ面になるのであった。しかし、彼はすぐさま思考を切り替え、テンギョクの態度を良いように捉え始める。


 「だが、今回もしかしたら協定の破棄を一方的にされると思っていたから、悪くはないのかもな。テンギョクはまだ冒険者ギルドとの繋がりを保とうとしている感じだった。となると仙国は敵対するわけではなさそうだ。一応、仲間という括りで見ることが出来る。それは良い方向に転がっていると考えられるわけだ」


 と述べるテイワズの言葉を否定するようにラフノ・マースは意見を挟む。


 「いやいや、あれはポーカーフェイスというのもありえるからな?何を考えているか分からないからこそ、本心では我々を見捨てるつもりなのかもしれないからな」


 二人でうーむ、と考え始める。


 だが、アナトの中では二人とは全く違う意見であった。


 (多分、テンギョクとしては冒険者ギルド連合を見捨てるかどうかは関係ないんだ。ただテンギョクの考えを予測するんだったらやはりあの言葉。『目的は果たせた』だ。この短い時間の中で一体、何の目的を──)


 「もうこれ以上、考えても仕方ないでしょ?時間も有限だしさぁ……私とても暇を持て余してるんだよ?アナトに会えるからここに来たっていうのにさァ!」


 そうして頬を膨らませて退屈そう子供のような態度と発言をするニルであった。彼女の言う通り、今日一日で明日の会議を成功させる。そのための話し合いであり、この集まりは決してテンギョクの思考読み取り会ではないのだ。


 「それじゃ、さっさと明日の対策を練っていきましょうか」


 そのアナトの言葉と共に二人もテンギョクに対する思考を止め、話し合いを進めていくのであった。

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