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外界の者 9

 黒いローブの集団に関する情報を公開しなかったのは、世界に余計な混乱を与えてしまう可能性があったからだ。神話の時代から存在し、人類が滅ぼさなければならない厄災。それらの力を人間が取り込める、その事実だけでも大きな危険性を孕んでいる。


 まず、軍事的に利用される可能性がある。精神を汚染する狂気を振りまき、毒ガスのように使う者たちも現れるかもしれない。また、そうなると討伐しなければならない厄災を、利用される危険性から討伐することすら出来なくなる。


 ほかにも、黒いローブの集団が何処かの組織に所属している可能性があったからだ。まだ分からなかったあの状況でがメイガス・ユニオンの厄災研究によって生まれた者たちの可能性、仙国の軍に所属している特殊部隊の可能性……色々と考えられた。まぁ、結果はメイガス・ユニオンと裏で同盟を結んでいた独立組織だったわけだが。


 ともかく、不透明な状況で情報公開することが危険であったため、決して他の組織、国家へと情報を流すことはなく、また冒険者連合の中でも本当にごく一部の者だけで渡っていた情報だった。しかし、今回はそこが裏目に出てしまった。


 冒険者ギルドは各国との協定を結び、拠点を置かせてもらっているという立場。こんなに重要な情報を隠されていたとなると不信感を買ってしまうことになる。こうなると非常にまずい。


 上手く説得出来ればさらに列強諸国との関係が強く結ばれ、失った戦力をカバー出来るぐらいには増強可能かもしれない。だが、悪くいけば──


 「考えても仕方あるまい。今回は仕方ないことであり、言い訳の余地もない」


 そのように言い捨てるのはテンギョクであった。


 何度も言うようで悪いが、彼はギルド支部長でありながら王。ゆえに黒いローブの集団は今回の神都崩壊によって、ようやく知った情報。そう、彼もまた除け者にされた人物ということだ。


 だからこそ、前日の話し合いに来ると言ってきたとき、さすがのアナトも内心、凄まじいほど焦り、どのように言いくるめようか、考えていた。だが、彼の態度、表情、雰囲気はそこまで怒っているようでも冒険者ギルド連合に猜疑心を持っているわけでもなさそうだ。


 ゆえに──


 (コイツは何を考えているんだ?)


 テンギョクの心の中を覗くように、アナトは彼の眼をまっすぐ見るのであった。だが、そんな思考を張り巡らせているアナトを驚かせるような言葉をテンギョクは出す。


 「それに明日の会議に参加するつもりはない。私は顔を出せたことで充分目的は果たせた。アナト殿とテイワズ殿が息災で良かった。それさえ確認できれば私の中の問題は解消されたのだ。今からしばしば忙しくなるのでな、ここいらで退散するとしよう」


 そういってテンギョクは懐から一枚の紙の札を取り出す。そこには魔法陣が描かれており、一目見て転移系統の術式が刻まれているのがアナトには分かった。

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