外界の者 3
トーゼツたちは生き残ったこと、そして再開できたことの喜びをしばらく噛み締めながらもとりあえず部屋から出て、軽くご飯を食べ始める。
テーブルに並べられた物は消化に良いシチューとパンであった。昨日の夜にでも作っていたのだろうか。ミトラは鍋でシチューを温め直すのであった。
ずっと寝ていた体に入ってくるご飯は心も体も満たしていく。やはり体の土台は食で出来ているということか。トーゼツの顔色も多少ばかり良くなっていく。
そういえば今、何時なのだろうか?と気になったトーゼツは山小屋にあった時計へと視線を移すのだが、今は午後四時。お昼には遅すぎるし、晩ごはんには早すぎる時間だ。なんだか生活リズムが狂いそう、と考えてしまうトーゼツだった。が、やはり体は美味しいモノを求めているようで動かす手が止まらなかった。
そして出来る限り体調を整えたトーゼツたちは山小屋から出る。
「もうちょっとトーゼツには体を休んでいて欲しいんだけど、止めても無駄でしょ?だったら冒険者として任務を受けて欲しい。ついてきて」
そうしてミトラは歩き始める。アナーヒターはミトラの行く先がすぐさま分かったようで、すぐさま後ろを歩き始める。何も分からないトーゼツはとにかく二人を追いかけていく。
外の風が気持ちよく、木々の良い匂いが鼻まで流れてくる。神都から離れているとはいえ、それでも二百キロ。一週間ほど歩けば誰でも来れる場所であり、馬などを使えば三日もかからない。その程度の距離しかなく、死と狂気の溢れている戦場がすぐそこにあるとは思えないほど、のどかな場所であった。
山小屋の窓から覗いた時には気づかなかったが湖の周りには簡易テントが設置されており、そこには避難してきた多くの人たちがいた。しかし、神都の人口はもともと十万近く。しかしテントの数などを考えればここに居る人たちは百人程度しかいない。
再びトーゼツの中に悔しさが込み上げてくる。が、それをすぐさま飲み込む。
そうしていると、目的地についたようだ。
そこは周囲の簡易テントの中でも一際大きく、ただ避難民のために立っているのではなく。何か特別な場所であるというのがすぐさま理解する。
テントの布を捲り上げ、三人は中に入る。
そこには大きなテーブルと、そこを囲うようにいくつもの並べられた椅子があった。そして上座に座っている者がいたが、それは──
「誰かと思えば……ようやく起きたのか、トーゼツ」
それはトーゼツの上司にあたる人物であり、剣聖の可能性を持つ男──ベスであった。
「ベス!無事だったんだな!ということはポットバックとかも無事なのか!?」
「特異課の所属してる奴は全員無事だよ。ったく、助かって良かったが、ギルド連合本部は壊滅、調和神アフラは消滅、神都は制圧されちまって……なんとも面倒なことになっちまったな」
ベスは問題だらけで、自分も任務に駆り出されるんだろうな、と少し先の未来を考え、嫌な気持ちになりながら「はぁ」と深くため息をつく。




