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外界の者 2

 そのように説明を受けて問題ない程度からハッキリ、起こった全ての記憶を思い出したトーゼツはさらにミトラへと質問を続けていく。


 「そういえばそうだった。ここはケルテン湖だったな。それでほかにこの場所に避難してきた奴はいたか?」


 神都の周辺には大きな都市や村はなく、森林の中で孤立した都市であった。それでも冒険者ギルド連合本部には地方の冒険者ギルドへと魔術で転移出来る仕掛けがあったり、国境までしっかし石畳で舗装されて伸びている街道があり、馬さえいれば一日で他の都市へ行けるくらいには交通の便は良かった。


 しかし、元々は神々は住まうために造られた神都では大きな欠点があった。それは今回のような緊急時の避難先を考えられていないことだ。一柱だけでも絶大な力を持つ神が避難しなければならない状況というのは想定しづらい。そのうえ、神々は神代委の頃から浮世──つまり人間社会から離れた生活を送っていた。ゆえに神都の周囲には村も街もない。


 では今回の事件で人々は何処へ逃げるというのか?となると今、トーゼツのいるダッテン山の麓にあるケルテン湖が最も神都から近くて休める場所なのだ。


 無事に生き残った者たちはここを目指してくると思っていたのだが──


 「今のところ、何人かの冒険者は見かけたよ。あとアナーヒター達も無事みたい。私たちとは別の山小屋にいるみたい。でも一般市民らしき人は……」


 「…………」


 戦い抜くことが出来た冒険者しか生き残れなかったという事か。戦いを知らず、平和に生きたかった一般市民は誰一人として生き延びることは出来なかったというのか?いいや、もしくは一般市民全員がサルワの放った狂気に耐えきれず化け物と成り果ててしまったのか。


 「そうか……」


 ただでさえ悪い顔色のトーゼツの表情が曇っていく。


 もう終わったことだ……多くを助けられなかった。ただそれだけの話。あの時ミトラは言ってくれた。次に繋げろ、ここは退いて生き延びるんだ、と。それでも助けられなかった者たちを忘れて先に進むのは難しい事だ。


 そうしてどんどんトーゼツの心の中に負の感情が芽ばみ始めていた時──


 「トーゼツ!目を覚ましたのか!!」


 心配と安堵の色の混じった声でドアを蹴破る勢いで部屋に入り、トーゼツの元に駆け寄ってくるのはトーゼツのよく知った人物、アナーヒターであった。トーゼツの眼に映る彼女の姿もボロボロであった。まだ治癒魔術が使えりほど魔力は完全回復していないようで、体のあちこちに傷跡が残っている。


 だが、アナーヒターは自分よりもトーゼツの方が大事のようだ。


 「うわっ、そんな可哀想な事になって……。何処か臓器でもやられてるんじゃない!?ちょっとまだベッドで横になった方が良いよ!私が治癒魔術かけてあげようか?」


 「いや、お前も他人のこと言えないほどボロボロじゃないか!お前こそ寝ていた方が良いだろう?いやぁ、それよりもお互い無事でよかった……!」


 トーゼツは心身ともに参っているこのタイミングでアナーヒターに再会したことでとてつもない安堵感に包まれる。エルドという友を失ってしまったが、まだ自分には多くの仲間がいると感じられたのだ。

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