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外界の者

 トーゼツは目を覚ます。


 そこはベッドの上であった。上半身だけを起こし、周囲を見渡す。が、そこは見知らぬ部屋であった。ベッドの近くには小さなテーブルに二つの椅子。窓の側に置かれた花瓶。そして窓から見える風景は湖に森が見える、まさに自然の溢れた景色であった。


 どうして自分はこんな所にいるのか、トーゼツは記憶を探る。のだが──


 「まだ…疲れが溜ってんのかな?」


 前後の記憶が曖昧だ。確か……神都で戦っていて…ダメだ。ハッキリ思い出せない。忘れているわけではなく、どちらかというと記憶の混濁。色んな事が一気に起こったことにより脳の整理が追いついていないだけ。さらに肉体疲労、精神疲労も重なっているため、思い出すのにまだ時間がかかりそうだ。


 「とりあえず……二度寝するか」


 そうして起こした上半身をもう一度、横にしようとしたその時、ガチャリと部屋のドアが開く。


 「いい加減起きた方が良い、もう三日も寝てるんだぞ?」


 そのような言葉をかけながら現れたのはミトラであった。そしてミトラはトーゼツの表情を見た途端「いいや、疲れが残ってるみたいだし、まだ寝てた方が良さそうだね」と優しく言う。


 自分は三日も寝ていたのか……そして三日も寝ていたのにまだ寝てて良いというほどには自分の顔はひどいのか。


 近くに鏡はない。トーゼツはベッドから降りて窓のガラスの反射で自分の顔を見る。そこには血が足りていないのか、もしくは体の何処かが不調なのか、顔色がこれまでに見たことないほど青白くなっていた。また睡眠が不足しているのかもしれない、眼も真っ赤に充血している。


 なるほど、これはあと一日、寝ていた方が良いかもしれない。


 だが、こうしているうちにある程度、脳の記憶の整理が終わったようだ。何が起こったのか、そしてここが何処なのか、まだ鮮明には不可能だが、問題ない程度になら思い出せる。だからこそトーゼツはベッドに戻ることはせず、疲れの残っている体で無理やり動き始める。


 「寝てる時間はないだろ?俺が寝ている間、今後についてどんな話になっているか。聞かせてくれないか?まだ混乱している記憶の整理もかねてな」


 そうしてトーゼツはミトラから前後の記憶を確かめながら、寝ている間の話を聞き始める。


 神都を脱出して約一週間後──トーゼツ達は神都から約二百キロ南東にある自然にあふれており、故に魔物の生息域としても有名で人の近寄らない山、通称ダッテン山と呼ばれている場所の麓にあるケルテン湖へとやってきていた。


 ここは先述した通り魔物も多いため、多くの戦士たちの修行の場所としても使われている事で付近では有名な山であった。と言っても魔物をむやみに狩るのは生態系を崩しかねないので冒険者ギルド連合に山の立ち入り許可を取ったうえで、ルールを守らないといけないのだが。


 そして現在、トーゼツ達はこのケルテン湖に点在している修行者用の山小屋で休んでいるということであった。

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