表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
373/606

厄災浸蝕都市 2

 射出された槍はソニックブームが発生し、大通りに面している建物が崩壊していく。またその衝撃波は化け物さえも跡形もなくミンチになっていく。だが、そのミンチになった肉は槍に纏わりつく炎の熱によって蒸発し、灰すらも残らず消えていく。


 それは最終的に神都を守るために作られた外壁に突き刺さる。やはり、神々が造った防壁だからだろうか。周囲の建物とは違い、ソニックブームで壊れることはなかった。しかし、突き刺さった個所から一気にヒビが入り、防壁が大きく裂けていく。ガラガラと瓦礫となって外壁は崩れていく。


 「さて、この調子で化け物を一掃しつつ、外壁を壊していくか。あとは──」


 どうやら彼女はとっくに気づいていたようだ、アナトは化け物たちにバレない様に建物の影に隠れていたアナーヒター達のいる方へと意識を向ける。と言っても、その建物も半壊してしまっており、隠れ切れていない状態になっているのだが。


 「お前ら、神都から脱出するつもりだろ?今なら簡単に出れるぞ」


 「お、おう。そうだな、だったら俺はこの戦場から離脱させて貰うぜ」


 そうしてベスは歩き出す。


 「お、俺も逃げるとするかな。俺みたいな奴は役に立つ事はないだろうし、逆にお邪魔になるかもしれないしな」


 べスについていく形でテルノドもまた去ろうとする。しかし、アナーヒターとエイルの二人は動こうとしない。ベスは振り返り、二人に問う。


 「お前ら、行かないのか?」


 「もちろんだ。私がお前らについてきていたのは、お前らを逃がすため。私はトーゼツと合流しないといけないからな」


 アナーヒターはそのように言うのだが肉体疲労、魔力消費……この戦場を生き残るのは不可能なぐらいの状態だ。しかも、その表情は明らかに疲れ切っており、精神的にもかなり参っているようだ。


 「私もまだ怪我人が居れば助けなくちゃいけませんし、復活可能な死体であれば蘇生させないと!医神と呼ばれる私だからこそ出来ることがまだあるはずですし!」


 エイルもここに残るつもりのようだ。


 「はぁ……お前ら…」


 他者を重んじるその気持ちは尊いものであり、人として素晴らしいのだろう。しかし、この現状において今大事なのは自身の命だ。ここで無駄死にする可能性が高い以上、ここはさっさと離脱して、次に繋げるために生きる事が重要だ。


 ベスは二人を説得しようとしたその時、アナトの方が先に口が開く。


 「あとは私に任せておけ。トーゼツは必ず私が連れて来る。エイルも一般市民の救助を今は諦めてくれ。ここはもう私たちの知っている神都じゃない。人は狂気に侵され、厄災が溢れる場所。もう何が起こるか分からない。ここはサルワの支配領域、言うなれば厄災浸蝕都市やくさいしんしょくとしだな。戦えない者は邪魔でしかない。それでも神都に残るっていうんだったら正直に言うぞ、ここで死ね。消息不明になる方が気分が悪いからな」


 そうしてアナトは再び神都──いいや、厄災浸蝕都市へと戻っていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ