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厄災浸蝕都市

 サルワの魔力と狂気が溢れる神都。


 アナーヒターやアナトがいることで勝利を信じ、一般市民を守って戦っていた冒険者も今では半分以上が化け物と化し、人を保てている者たちもまた絶望していた。侵攻していたメイガス・ユニオンもまたこの状況に困惑し、情報錯綜、隊列の乱れ、指揮官の死亡及び化け物への変貌……これらによって暴走状態となっており、壊滅状態と言っても過言ではなかった。


 しかし、今の状況、生き残るという点で見れば冒険者側の優勢になっていた。


 ベスとアナーヒターにエイル、テルノドの四人は神都から出るための外壁の門付近へとやってきていた。先ほどまで誰も出られないようにメイガス・ユニオンの魔術師たちが待機していたのだが、今は魔術師の姿はいない。どうやら逃げたか、それとも──


 「くそッ、異様に化け物の数が多いな。メイガス・ユニオンの魔術師全員があの化け物になったわけじゃないだろうな?」


 建物の影から大通りの方を覗くベス。門の前には、うじゃうじゃと蠢き歩く化け物の姿がいた。


 「正面から突破するか?」


 多少、魔力が回復し、動けるようになったアナーヒターは杖を構える。


 「おいおい、さっきまでぶっ倒れていた奴が何を言ってんだ。無茶をするな、それで余計な仕事が増えるのは御免だからな」


 「じゃあ、どうするつもりだ?」


 そうしてアナーヒターは後ろを見る。


 そこにはエイルとテルノドがいる。エイルに関してはアナーヒター同様、術聖ではあるのだが……医術専門であり、戦闘は期待できない。テルノドは優秀な魔術師である、は彼は魔術を使う戦士ではない。魔術の研究者。戦闘も出来るのだが、ここに来るまで魔力量をかなり消費してしまっている。


 ベスはまだまだ戦闘継続可能ではあるみたいだが、この化け物を単独突破できるとは思えない。


 さて、どうするか。


 そのように考えていると、コツ、コツと足音が聞こえてくる。アナーヒター達は音の聞こえる方向を確認する。それは門へと通じている大通り。普段であれば荷馬車などが通る道。その真ん中を堂々と歩く一人の影。それは四人がよく知っている者の影であった。


 槍を構え、影の後ろでは杖が宙に浮かび、ついてきていた。


 また化け物たちもその姿に気づくと、そのタコの触手のように裂けた両腕をゴムのように伸ばし、その影を攻撃する。しかし、その影は華麗にその攻撃を避け、また避けきれないと判断した魔力を纏った拳ではじく。


 無駄の無い動き、凄まじい余裕、凄まじいほどの魔力量……。


 それは最強の冒険者でありこの戦場に置いて希望の光となる存在──アナト・サンキライであった。


 アナトは槍を構え、杖に魔力が灯る。


 「絶大槍術〈スカーレット・ランス〉」


 詠唱と共に槍に纏う魔力が紅く染まり、ゆらゆらと揺らめき始める。それは可憐で美しくも、全てを燃やし尽くしてしまいそうな炎であった。


 彼女は次に杖に魔力を送り、魔法陣を展開し、再び詠唱を行おうとする。また、手に握っていた槍を離す。すると、槍は落ちることなく宙を舞い、魔法陣の中央へと移動する。


 「絶大魔術〈ハイパー・インジェクション〉」


 詠唱を終えたその瞬間、槍は魔法陣を潜り抜け、光を超えたとも思えるような速度で射出される。

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