計画完了 3
多くの者達が化け物となっていく。戦闘も出来ない一般市民、心の弱い戦士たち……。もちろん狂気に対抗し、耐え切る者達もいる。しかし、その数倍の数が変異していく。
そして、仲間たちがば化け物になっていくその姿を目の前で見て、耐えていた者達もまた心が揺らぎ、狂気に犯されていく。
しかし、それ以上に憤怒に燃えるのは──
「ふざけるなァァァ!お前は……お前だけは…………!!」
人を守る、それが俺の原点だった。それが化け物とかしてもなお──
「くそがッ!」
知らずとはいえ、俺は多くの人たちを殺していたというのか!?
許せない。
俺は良い。仲間のミトラも、ロームフも……。死んだエルドに対する行動ならまだ許せる。俺たちは明確な敵。殺さないといけない相手。それを殺すことも、化け物にすること対して文句はない。しかし、一般市民は何も関係はない。
平和に暮らしていきたかったはず。
彼が何をしたというのか!?
「殺す!」
これまでただひたすらに前を向き、歩き続けたトーゼツのその怒りにミトラとロームフは驚くと同時に恐怖に似た感情を抱いていた。
サルワとの対峙後、ずっと肩を借りて移動し続けていたトーゼツは無理やり自身の脚だけで立ち上がる。膝はガクガクと震え、今にも倒れそうだ。そこを再びミトラが支えなおそうと手を差し伸べるのだが、それを彼は退かす。
「殺す、殺す、殺す!!俺たちをコケにしやがって!みんなを化け物にしやがって!お前の──お前を──お前が──くそっ、絶対にぶち殺す!」
怒りのあまり語彙力が低下している。何も考えきれなくなっている。
だからこそ、恐ろしい。
何処までも突き進むトーゼツがこの怒りのまま進み続けるのであれば、それは──
「落ち着け、トーゼツ!」
ロームフはトーゼツを抑えようとする。
「アンタの気持ちは分かる!だけど、ここは抑えないと……!今は退くんだ!!」
必死にしがみつき、サルワの元に向かおうとしているトーゼツの動きを止めようとする。が、一体、どれほどの力だというのか。力づくで引っ張られ、ロームフの方が引きずられていく。
そこにミトラもまたトーゼツの腕を掴み、言葉をかける。
「トーゼツ、死に行くつもりか」
「なわけあるか。ここで死ぬべきなのは俺じゃない、あの厄災野郎だ」
そのミトラを覗くトーゼツの眼は……これまで見たことのない感情があった。
それは人ではない、ナニカ。そして、トーゼツが神から祝福を得られなかった正体でもあった。ミトラはそれを感じ取り、トーゼツが人ではないナニカを孕んでいるのを知る。
「俺の……邪魔をするのか?」
そこにとてつもない嫌な気配を感じ、狂気とは違う不気味で異様なモノが精神を蝕んでいく。が、それを強い心で跳ね除け、自分の心を、気持ちを以ってトーゼツ訴える。




