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計画完了 2

 高いところから見ているとはいえ、この都市全ての人間の言葉を聞き取り、表情を読み取ることなど出来るはずがない。のだが、彼女は厄災。人ではないからだろうか。自分の言葉に対し負の感情を抱いている人間に対してサルワは眉を顰める。


 彼女は続けて述べる。


 『もしも、私の言葉を受け入れないというのであれば──』


 サルワは体内にあった魔力を全て一気に放出させる。それはどんどん神都へと流出し、あっという間に神都を覆っていく。


 「なッ──」


 先ほどまで馬鹿にしていたメイガス・ユニオンの指揮官に悪寒が奔る。これまで冒険者や化け物と戦って、多少ながら血と汗を流したが体に付着しているそれらが一気に凍ったような感覚に陥る。


 また引き連れている魔術師もまた困惑している。


 「これほどの魔力量……!?これが厄災だというのか!」


 「これではまるで神の……」


 あちこちから彼女を畏怖する言葉が出てくる。


 今すぐにでもこれを止めなければならない。メイガス・ユニオンの魔術師として──いいや、世界で最も優れた種族として、その誇りと尊厳を持つ我々エルフが厄災に恐怖するまでならともかく、恐れをなして頭を垂れるなどあってはらないのだ。


 しかし、指揮官である彼もまた言葉が出ない。頭で言い聞かせているが、精神(こころ)でわかっているのだ。今の我々ではアレはどうしようもない、と。


 (任務ではこの都市をメイガス・ユニオンを制圧せよとの事だったが──)


 この都市は神代から存在している調和神アフラが支配してきた都市だ。それを今度は我が国、セレシアが支配すれば世界に大きな影響を与えると考えて制圧という任務を下したのだろう。


 しかし──


 「……くそっ、ここは撤退だ!このまま侵攻しても全滅あるのみだ!いますぐここから──」


 その瞬間だった。


 自身の体に異変が起きる。


 「あ…ァ?」


 腕が裂ける。どんどん避けていく。しかし血は出ない。そこに骨もなく、まるでタコやイカのような軟体動物の手足のような……。


 そして胸部や腹部、あちこちがぶくぶくと膨れ上がり、目も真っ赤に染まっていく。


 それは部下であり、引き連れた魔術師も同様だった。


 「どう…し………て……」


 俺は……エルフで、選ばれた…………種族だから……。


 いイや、ちがウ。


 お……は……たダの…………………


 あは


 あはははははははははははははははははははははははははははははははははははは



 ひたすらに狂っていく。


 サルワに恐怖した者、魔力に充てられた者全てが化け物へと変貌し、魔獣と化していく。


 その状況を見て、トーゼツは戦慄する。


 「ちぃッ!殺しても殺しても化け物が減らないって思っていたが、まさか──」


 この都市にいる化け物全て、厄災の狂気によって精神崩壊してしまった元人間だったというのか!?

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