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裏切り者 2

 イルゼは一歩大きく踏み出し、アナーヒターに拳が入る範囲まで詰めると詠唱を開始する。


 「固有術!」


 両手に纏っている魔力がゆらゆらと揺らめき始めると同時に、まるで烈火の如く強く存在を放ち始める。それだけで何かヤバいのが来る、そう察したアナーヒターは杖を構えながら自身の血液を操作する。周囲の水は今、イルゼの魔力を帯びているため操作は出来ない。しかし、自分の血液であれば問題はない。


 「上級魔術〈ウォーター・ウォール〉!」


 アナーヒターの前には大きく、自身の血液で構成された真っ赤な壁が出現する。


 「〈クレイジー・ナックル〉!」


 イルゼの拳が〈ウォーター・ウォール〉に衝突する。真っ赤な壁が拳の衝突した箇所を中心に、まるで水たまりのように波紋が広がっていく。それだけではない。かなりの衝撃が水の中を奔っているのか、ビチャビチャビチャ!と水の跳ねる音も強く響いている。


 アナーヒターはさらに〈ウォーター・ウォール〉に魔力を送り、壁を補強する。しかし、アナーヒターの魔力が間に合わないほどの威力を出し続けるイルゼ。どんどん真っ赤な壁の一部が液状に戻り、地面に散っていく。


 「どんだけ威力が高いんだよ!!」


 思わずアナーヒターの本音が口から零れる。


 しかし、イルゼの拳の方も限界のようで、これ以上、ダメージを出すことが出来ないと判断したイルゼはすぐさま拳を引き、今度は蹴りでどうにかしようとする。のだが──


 「ッ!!」


 イルゼは何かを察知する。それは本能からか、それともアナーヒターから出ている魔力の流れを予測してからなのか。分からないがとにかく慌てて腕全体に魔力を纏わせ、防御の構えを取る。すると、予測通り、〈ウォーター・ウォール〉に変化が現れる。表面の水が槍の形となってイルゼに向かって飛び出してきたのだ。


 鎧のように纏った魔力を簡単に貫き、腕に穴を開け、槍先が体に突き刺さる。一瞬で体中に傷が出来たが、全て皮膚、肉止まり。内臓まで到達している一撃はなく、大して戦闘に支障が出るようなダメージはなかった。だからと言って痛みがゼロというわけではない。苦痛でありながら、しかし負けない嗤いの混じった表情をイルゼが見せる。


 そこにアナーヒターはさらなる追撃を入れる。


 杖に水を纏わせると同時に魔力を込め、一気にボンッ!と強く杖でイルゼを殴りこむ。さらにそれだけではない。無詠唱、無魔法陣で上級魔術〈マジック・インパクト〉を発動させる。


 怯んでいたイルゼはその攻撃に防御できず、避けることも出来なかった。


 「かァッ!!」


 みぞおちに入り、一気に肺の空気が抜け出す。


 「っらァ!!!」


 さらにアナーヒターは腕に力を入れ、杖をさらにみぞおちへ減り込ませる。


 その威力は凄まじいものでイルゼは数十メートルも吹っ飛んでいき、そのまま後方にあった建物の壁に背中を叩きつけられる。

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