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狂気の果てに 6

 サルワは次にミトラ、ロームフの二人を見て、「お前らも私に向かってくるのか?」と尋ねるのだが、すぐさま「いや、そんなわけがないか」と言い放つ。


 もうミトラ達に戦う意思は見えない。トーゼツとは違って状況を理解しているというか……そもそも憤怒の厄災討伐時にかなりの体力を消耗してしまったうえに、アルウェスとも戦っている。肉体疲労に精神的疲労、そして生成できる魔力量も限界を迎えている。


 だが、それでも戦いが避けられるのであれば戦わないと言った感じであり、もしサルワが殺そうとすれば二人は抵抗してくるだろう。


 まぁ、抵抗した所で意味はないとは思うのだが。


 サルワはやってきた方向へと踵を返し、立ち去ろうとする。


 「おい、私たちを始末しないのか?」


 ミトラがそのように訊く。


 サルワとは敵同士。今後、絶対に味方になることはなく、また同盟関係になるようなこともない。だからこそお互いは明確に殺すべき相手である。のにも関わらず見逃すというのか。


 「始末するつもりだったら、最初に会った時に殺してるよ」


 サルワは軽く笑いながら答える。


 「私の最終目的はこの世界を私のモノにすることであり、世界を破滅させることではない。いずれ冒険者ギルド連合であろうと、メイガス・ユニオンであろうと、どんな大国であっても私の前に跪かせる!アナトも、アムシャも……!!あらゆる強者を力づくで配下にし、頂点として君臨するのだ!そして剣聖であるお前もその跪かせる者の一人だ。だから今は見逃す」


 そのサルワの言葉は、心の底から思っているモノであった。


 世界征服。


 子供のような発言であり、世界の誰もが成し得なかった事。悪神であっても、調和神アフラであっても、世界に強大な影響を与えても征服まではいかなかった。それを自分なら成し得ると信じているその重く、強い言葉は、彼女がやはり支配される恐怖、怯えから生まれた厄災だからなのだろうか。


 「ガキみたいな夢だな」


 思わずミトラは口から感想がぽつりと出る。だが、サルワはその感想すらも笑っていく。


 「言ってろ」


 そうしてサルワは去ってく。その背中姿を見ながらミトラは嫌な感覚を持っていた。


 今回の神都侵攻によって世界情勢が一気に傾いた。


 調和神アフラは消滅し、冒険者ギルド連合本部は壊滅。メイガス・ユニオンが世界情勢の中で一気に乗り出す形になる。だが、メイガス・ユニオンは北方の大国セレシアが運営している組織。そんなメイガス・ユニオンの影響が広がるのを他国が許すだろうか?


 一気に世界は不安定となり、何処で、誰が、何をしでかすのか不透明だ。


 そしてそれをサルワが計算して起こしたというのであれば──


 「……まさか、な」


 未来がどうなるか、分からない。だが、とりあえず今を生き残らなければ。ロームフと一緒にミトラは吹っ飛んでいったトーゼツの方へと歩きだすのであった。

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