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狂気の果てに 5

サルワはがっかりしながらも、死の厄災の核を手に取る。


 「アルウェスが生きた状態で取り込めば可能性はあったんだがな。まァ、しょうがない。多少は私の力を強めてくれるだろうと信じて取り込んでおくか」


 そうして死神の鎌はパリッ!とガラスのように砕け、その破片がサルワへと集まり入っていく。そしてさらにサルワはがっかりする。やはりだ。これまでも刃の厄災も取り込んで分かったはいたのだが……固有技能として厄災の力を認識が出来ない。これは神の権能だ。それはやはり自分が元から人間ではなく、同じ厄災であるだからだろうか?


 そうこう考えているうちに全てを取り込んでしまっていた。


 彼女はさらに持っていた鎖へと見る。


 「さて、憤怒の厄災も今のうちに」


 そして、同様に鎖を割り、自分の体内へと入れていく。


 「はははっ、この感覚だなッ!良いねェ、これぐらいハッキリ強くなる感覚がないと楽しくないぞ!この力であれば、今度こそアナトをぶち殺せる!!」


 彼女は高らかに笑う。


 側から見ていたトーゼツにミトラ、ロームフもサルワの力が増していくのが分かっていた。だが、それを止めること所か、動くことさえ出来なかった。支配の力でそもそも指一本も動かせないトーゼツはともかく、二人が動けないのは恐怖からか、それとも勝てないという絶望からか。はたまた諦めなのか。


 ただ、三人は敵が強くなっていくのを眺めるしか出来なかった。


 「ふぅ、気分が良い。この力、最高だな!私はどんどん父に近づいている!この世界が私にモノになるまであともう少しだな!ははははははッ、ははははっ、ははっ、はぁ」


 サルワの笑いも気分も下がっていき、ようやく平常時のテンションに戻ってくる。


 「さて、もう用事は終わった」


 サルワはトーゼツを見て、手をかざす。すると、すぐさまトーゼツの体に襲いかかっていた重さが消えて自由になる。


 「っし!」


 瞬間、トーゼツは何も考えず杖を持ってサルワへと向かっていく。


 「おいおい、勝てるわけがないだろ。そもそも私の力に抵抗出来ず動けなかっただろう?」


 そう言われても、トーゼツは止まらない。彼のその眼は無茶でも、無謀でもない。諦めず、本当に勝つというのを信じて向かってくる眼であった。


 「全く、お前は猪か?」


 トーゼツの持っている杖先から光が生まれ、まるで蛇のようにぐるぐると杖に巻きつく。そして、大きく振り上げてサルワへと殴り掛かろうとするのだが──


 『吹っ飛べ』


 「ッ!」


 トーゼツは強く後方へと引っ張られる感覚に陥る。脚に力を入れて踏ん張ろうとするのだが、全く抵抗出来ない。よく見てみると、足が地面に浮いているではないか。


 「くそッ!!」


 そのままトーゼツは無様に引っ張られていき、どんどんサルワとの距離が離れていく。そして最終的に数百メートルという遠い距離を強制的に取らされるのであった。

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