死の厄災 20
アルウェスはトーゼツにダメージが入っている様子を見て、固有技能が働いていないのを認識する。
(回復していない?回復するのに何か条件があるのか?それよりも──)
トーゼツの持っている杖の方へと意識を向ける。
「その杖から魔力が生成されている!そのうえその光はエルドの固有技能だ、それは……その特徴は──」
この世界には多くの魔具があるが、それら全ては魔力の伝導率の高い魔鉱石で造らせていたり、魔法陣が描かれていて、魔力を込めるだけで魔術が発動すると言ったモノ。魔力が生成される武器というのは基本、存在しない。魔力は魂から生成するモノ。道具に魂は宿らない。
だが、あの杖は魔力を生成している。つまりそれは──
「神代の遺物になっているな!?」
神々が造った現代の魔術学では再現のできない魔具、神代の遺物。
いいや、違う。さっきまではただの魔術師の杖。魔力を溜め込み、または魔力量を増幅させたり、術の威力、効果を底上げすると言った力しかなかった。
では、あの杖は──
「俺もこの杖が何なのかは分からない。でも、エルドの想いが……魂が込められたモノであり、それがこの杖を生み出したんだ。言わばエルドの想いが生み出した、現代の魔術学では説明できない超越技術だ」
「その杖が、超越技術?……くくく、はははははは!!!」
エルドは壊れたかのように、高らかに嗤い出す。
「いやぁ、この戦いで俺は何度、驚かせれば気が済むんだ。本当、この世界は未知に溢れている!素晴らしいかな、美しいかな!だからこそ、ぶち壊したい!!」
鎌を大きく構え、アルウェスはトーゼツへと接近する。
ふざけているようなアルウェスに対し、トーゼツは真剣の表情で彼を迎え打とうと杖を構えていた。
「ミトラ、この戦いは──」
「ああ、分かっている」
この戦いを見ていたミトラ、ロームフは確信していた。
トーゼツの勝ちだと。
アルウェスはまだまだ余裕そうな感じが出ているが、魔力量はトーゼツを下回っており、攻撃力もかなり低下している。それに対しトーゼツの魔力量は余裕があるうえに、エルドの杖があのように超越技術となったのだ。武器の性能が段違いだ。それにトーゼツの詳細不明な固有技能、他のトーゼツが所有している神代の遺物だってある。
この戦いは決して勝ち目がゼロではない。だが、その低い可能性を勝ち取れるほどアルウェスは強くはない。トーゼツのように強い意志を持っているわけでも、運命力をがあるわけでもない。
もう決まってしまったのだ、この戦いの結末が。




