死の厄災 19
アルウェスはトーゼツの振り上がった杖に対し、鎌を下げ、下から上へと斬りあげようとする。一秒後、その二つはガァンッ!と激しくぶつかっていく。
お互い、同等の魔力量、パワーなのか。ガチガチと拮抗しあって鍔迫り合い状態になる。
杖を鎌の合間から二人は互いを睨む。
「良いねェ、圧倒的でもなければ、強すぎというわけでもない!程よい戦い!あぁ、楽しいなぁ。これが本当の対等な殺し合いだァ!!」
そのアルウェスの嗤う言葉に煩わしくなりながら、トーゼツは杖の持つ手を強くする。その瞬間──
「なッ!!」
アルウェスは驚き、顎に強い衝撃が奔り、態勢が崩れる。
一体、何が起こったのか。
なんと光の球が飛び出してきたのだ。
それはあの殺したエルドの固有技能と同じ……あの光だ。
(あの杖の力……!?だが、魔力の消費は無さそうだ、つまり──)
「おっらァァァァ!!!」
アルウェスが思考している最中でも、トーゼツは攻撃を仕掛ける。
杖先で腹部を力強く殴られるアルウェス。
「ッ!」
みぞおちに入ってしまったようだ。一気に肺に入っていた酸素が口から吐き出る。落ち着いて呼吸をしようにも、肺周りの筋肉が動かない。
その後もトーゼツは動けないアルウェスにドスッ!ドスッ!ドスッ!と杖を入れる。
「下級魔術〈ファイアーヒット〉!」
大きく振り下げ、詠唱と共に杖に炎が纏わりつかせると一気に深く突く。
どれだけの威力だったのか。アルウェスは吹っ飛びそうになるのだが、脚に力を入れる。ズザザ、と地面と靴底が擦れて二、三メートル下がっていく。
「下級魔術!」
一歩踏み込み、距離を詰め、新たに詠唱して術を使おうとしているが、アルウェスも一方的に殴られ続けるつもりはない。
「固有術!」
鎌を持って斬りかかる。
「〈スワーリング・エアー〉!」
トーゼツの杖に空気の渦が発生する。しかし、それだけでは終わらない。杖先から光が生まれ、その渦に巻き込まれて光が螺旋を描く。
「〈クレイジー・スラッシュ〉!」
強い鎌の一撃だが、込めた魔力量が少ないからか。前の放った時よりも威力は弱い。それでもなお、今のトーゼツが喰らうには重すぎる一撃だ。
二つの術はぶつかり、そして──
「あァ!!」
押し負けたアルウェスまたもや後方へと吹っ飛ばされる。今度は脚の踏ん張りが足りず、背中から地面に落ちていく。そこからさらにバウンドしてゴロゴロと転がる。
このまま押していこうと考えるトーゼツだが、彼もまた、無傷では済まなかったようだ。胴体にサクリ、と大きな傷口が生まれる。
「ちぃッ!痛ッ……」
痛覚遮断の魔術は覚えていない。治癒魔術を使おうにも、それほど魔力量に余裕はない。死んでしまうほどの一撃ではなかったので固有技能『不屈の魂』も発動しなかった。




