死の厄災 15
エルドは自分の手に入れた力にものすごい喜びを覚えながらも、自分の進むべき道を見つけたことに大きな成長を感じていた。
やはり、自分は間違っていなかった。
トーゼツのように人を助け、皆を守るような立派な冒険者にはなれない。だが、それでも誰かの励みになれるような……一筋の光となって導く星になることは出来るはず。
そうして自分の望み、心の底に沈んでいたモノを認識し、得た力……。
エルドはトーゼツの眼を真っ直ぐ見て言う。
「俺が固有技能を獲得できたのはトーゼツのおかげだ、ありがとう」
「……何のことかは分からないけど、その力を手に入れたのはお前が頑張ったからだろ?俺は何もしちゃいないんだから、礼を言う必要はないぜ」
「いやいや、それは──」
その瞬間、大地が震撼する。
一体、何事かと思い、その震源地の方を確認する。そこは建物が崩壊している方面……つまり吹っ飛んだアルウェスのいる方向であった。
「やってくれたなァ、トーゼツ・サンキライ!!」
やはりアルウェスは変わらず嗤う。しかし、普段の全てを侮蔑している感情以外に、彼の瞳には多少の怒りが混じっていた。ここまで自分を追い詰めたトーゼツに対する不快感であった。
(残った魂は三人分。その全てを使って四人全員ぶち殺してくれる!!!!!!)
アルウェスは纏っていた魔力を全て鎌の刃へと送り込む。さらにいつも発している狂気が増してきている。それは十五の厄災と変わらないほどの狂気であった。
「まずいのが来る!!」
トーゼツは武器を構え、アルウェスに向かって駆けようとする。アルウェスの攻撃は今、ここにいる四人では絶対に防御しきれないモノであると察した故に、発動前に叩くという考えのもとの行動であった。が、それをミトラは手首を掴んで慌てて制止させる。
「待って、もう間に合わない!!ここは四人の魔力でバリアを展開した方が生存率が上がる!」
「いいや、絶大級の防御術なんて無意味な量の魔力だぞ!」
ミトラの案をすぐに却下するトーゼツ。そして、トーゼツの言っていることは正しかった。
あれはもう避けれない、逃げれない、発動の阻止することも出来ない。であれば──
「ここまで、なのか……」
ロームフは自分たちの未来を悟ってしまい、絶望する。
トーゼツは必至に思考して、この場を凌ぐ方法を模索する。
ミトラはせめて……!と少しばかり回復した魔力でバリアを展開しようとしている。
そしてエルドは──
「そうか……ここが…」
彼はロームフ同様、自分の未来を悟っている。が、それは決して絶望ではなかった。
エルドは全てを理解する。
どうして今、この力を手に入れたのか。
自分は誰の導く光になるべきなのか。
「……後悔はないな」
誰にも聞こえない小さな声でぽつり、とエルドはつぶやく。




