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死の厄災 13

 アルウェスの手からトーゼツへと永遠に注ぎ込まれる〈狂気侵食きょうきしんしょく〉。その負の感情は体に刻まれ、動きを鈍くするうえに脳に新たに余計な情報として処理されていくことで思考もどんどん遅れていく。


 なんとか肩に置かれたその手を振り解こうとするのだが、力が入らない。


 「さて、さすがに脳みそかち割ったら死ぬんじゃない?」


 そこに右手で鎌を構え、刃に魔力を込めるアルウェス。


 「固有術」


 詠唱を始めようとするアルウェス。さすがにこの状況はヤバい、死ぬかもしれないと思ってしまうトーゼツは抵抗しようと考えるのだが、やはり体が動かないし、力も入らない。


 後ろへ退こうにも、肩に置かれた左手がそれを許さない。


 「〈クレイジー・スラッシュ〉!」


 そうしてトーゼツの頭へと鎌が振り下ろされるのだが──


 カァンッ!と硬いモノ同士がぶつかる激しい音が強く響く。


 「なッ!?」


 アルウェスは強い衝撃と共に後ろへとノックバックする。それで思わず左手を離してしまい、トーゼツに放っていた〈狂気侵食きょうきしんしょく〉が解除される。


 「うおおおおッ!上級剣術〈瞬時断絶しゅんじだんぜつ〉!」


 慌ててトーゼツは上級剣術を発動させてから双剣で眼にも止まらぬ速度でアルウェスにザクザクザクッ!と斬りかかっていく。それにアルウェスは避けることも、防御する事も出来ず正面から喰らってしまい、一気に体力が削れてしまう。


 (まじ…か!!どうにかして、態勢を立て直さない、と!!)


 アルウェスは剣撃を喰らいながらもその狂気に溢れた心で痛みとダメージに抗い、鎌を強く握りしめ直し、怯むことなくその刃を再び振り下ろそうとする。だが、先ほどと同じ、何か硬いモノが飛び出してきてそれを防ぐ。


 「これはッ、誰が……!」


 何かが飛んできた方向をアルウェスは確認する。


 そこにいたのは──


 「これが…俺の力だッ!!」


 両腕に輝く光を纏っているエルドであった。


 「それは…一体……!?」


 先ほどまで力の無い、弱者だった少年がトーゼツとの戦闘の最中に成長してきた。しかも、その成長は厄災の力すらも凌駕するほどのモノだ。


 「やはり…上手くいかない……だが、それが面白い!!」


 アルウェスは嗤う。


 無様な姿で必死に戦うトーゼツに、身の丈に合わない成長をしたエルドに、ひたすら追い込まれていく自分に、ただただ嗤っていく。


 「まだ、嗤えるのか。だったら、これでぶっ倒す!」


 トーゼツは剣を構え、詠唱を開始する。


 「絶大剣術!!」


 その瞬間、鼻から血がたらり、と流れ出す。詠唱の段階でかなり脳の負担がかかっているのだろう。しかし、トーゼツは詠唱を続ける。


 「〈ドライブスオーバー〉!!」


 重く魔力の乗ったその二つの刃は、これまでにない速度と威力を以てアルウェスに襲い掛かる。

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