死の厄災 12
新たな光……力を得たエルドは何が起こったのかと、自分の体をまじまじと見ていた。しかし、外見に変化はない。だが、明らかに自分は力を持っている。
そうか、これが──
そう考えていた中、彼はハッとして思考を切り替え、戦っているトーゼツの方を見る。
今、状況はとてもまずいものであった。
アルウェスとトーゼツは近距離戦で乱闘状態であった。
アルウェスに魂を刈られ、それでも『不屈の魂』で起き上がり、斬り返す。アルウェスもダメージを負いながらも、莫大な魔力量で一瞬で治癒させてまた斬っていく。
どっちが先に倒れるかという、考え無しの戦い。
アルウェスはもう全ての魂を使い果たすつもりなのだろう。体内に隠して溜め込んでいた魔力が放出されており、纏っているその魔力はまるで城のように感じる。
また、二つ生成していた固有具現化〈サイズ・オブ・デス〉も一つだけになっている。まぁ、ただでさえ死神が持ちそうな巨大な鎌という近距離戦には不向きの武器だ。それをこの状況で二つ使うという馬鹿な行為はしないだろう。
トーゼツの方もまた武器を変えており、赤と青と対立した色の双剣で戦っている。剣よりも短く、攻撃可能範囲が狭い。が、双剣の方が小さく軽いためトーゼツの攻撃スピードがかなり上昇している。
(考えてもトーゼツの力は分からない。だったら、もう何も考えず叩っ斬る!!)
思考を放棄したアルウェスは、とにかく考えず攻撃の力だけを高めていく。
「固有術〈狂気乱撃〉!」
鎌の刃から多くの斬撃は飛び出しズバズバズバッ!と体中が引き裂かれ、一瞬で血まみれになるトーゼツ。しかし、死ぬようなダメージではなかったようで、『不屈の魂』が発動することはなく、傷が治癒することなかった。傷が癒えればある程度、痛みは引くのだが今回はその痛みが神経を辿って脳へと到達する。
「ッ!」
それが脳の情報処理を遅らせ、思考を鈍らせる。
それでも、本能なのか。もしくはアドレナリンでも分泌されているのか。トーゼツは両手に持った剣を強く握りしめ、素早く斬っていく。
「っらァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
赤い剣で斬り、素早く引いて今度は青い剣で斬り裂く。
今使っている双剣は攻撃魔術が付与されている神代の遺物ということもあってか、剣術を発動させていないものの、しっかり魔力の膜を突き破りアルウェスの体を斬っていく。
赤い刃は通った皮膚、肉はジュウッ!と焼ける音と共に強く焦げ、青い刃が通った箇所は全ての水分が凍りつき、透明でありながらもあらゆる光を反射するような氷がまるで生えてくる。
「ってェな、固有術〈狂気侵食!」
鎌を持たない左手でトーゼツの肩を掴む。その瞬間、トーゼツの精神に何かが入ってくる。
「……!!」
それは恐怖、怒り、憎しみ、悲しみ……あらゆる負の感情であった。




