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死の厄災 11

 そして、このトーゼツの抱えている爆弾に一人、気づいているのが二人いた。


 エルドとミトラだ。


 二人もトーゼツが固有技能を持っているのは知らない。いいや、なんとなく持ってるんだろうな、とは感じているかもしれないが、どのようなモノなのかは把握していない。


 だが、これほどの凄まじい治癒速度に、治癒能力。体の何処かに大きな負担がかかっており、いずれ肉体再生ができなくなるというのは簡単に予想できる。これはトーゼツがアルウェスを倒すか。その前に肉体再生ができなくなるのか。これが勝負の重要点であると二人は分かっていた。


 ロームフはまだ魔術師としても、戦士としても未熟である故にまだトーゼツの爆弾に気づけなかった。


 「私が加勢に行ければ──」


 ミトラは立ち上がり、剣を持とうとするのだが、すぐさまカラン!と地面に剣を落としてしまう。まだ魔力が充分に回復しておらず、魔力切れの反動で体に力が入らない。剣さえも持てない状態なのだ。それだけではなく、脚もフラフラして立つのも安定していない。


 こんな状態で無理にいけば足手纏いになるのは確実。なんならトーゼツはこちらを守りながら戦っているので既に足手纏いの状態になっている。これ以上、状態を悪化させないためにも彼女はその場で座り込み、大人しく体を休めることにする。


 しかし、もう一人この状況を理解しているエルドは違った。


 (俺は……何のためにここにいるんだ!?ただトーゼツの戦っている姿を眺めることしか出来ないのか!?俺は、何のためにあの街を出て………旅に出ることを決めたんだ!!)


 エルドの心の中で何かが揺らぐ。


 トーゼツは職を持たない、神の加護がない、才能のないと言われてもなお前を見て歩いてきた人間だ。その強さに憧れてきたのに魔力が少ない、肉体疲労で動けない、弱いから戦えない、そんなモノを理由に座り込んでしまって良いのだろうか?


 いいや、そもそも──


 (俺は…トーゼツになりたくてここにいるのか?)


 違う、そうじゃない。


 俺はトーゼツに憧れている。それに変わりはない。だからといって、あのように……ボロボロになりながらも前に出て、命をかけて戦い続けることが俺の理想なのか?


 違う、違うだろ!!


 俺の成りたいモノは……!



 エルドは気付けば真っ黒な世界に立っていた。


 この場所が何処なのか、どうして突然こんな場所に立っているのか。わからない、頭でも理解していないが、なぜか感じていた。


 ここは自分の心の中、いわば精神世界、心象風景である、と。


 そして、エルドの目の前に輝く一筋の光。


 それは迷った者を導く標の星。


 「そうだ、俺の成りたいモノは──」


 俺にとっては憧れで、届かないトーゼツ。きっと俺は何年かけてもトーゼツのようにはなれない。それでも、自分も誰かの光に……標の星に成りたい!


 彼は手を伸ばし、光を掴む。


 その瞬間、体に力が溢れ出し、意識が元の世界へと戻っていく。

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