死の厄災 9
トーゼツはトドメを刺す勢いで今度は剣で薙ぎ斬ろうとする、のだが──
「固有術〈狂気乱撃〉!」
アルウェスの詠唱と共に死神のような巨大の鎌からいくつもの斬撃が乱れて飛び出る。突然の反撃にどうすることも出来ず、トーゼツの体を引き裂いていく。
それだけでは終わらない。
「固有具現化〈サイズ・オブ・デス〉!」
アルウェスの左手には新たな鎌が出現しており、それでトーゼツの魂を今一度、刈り取る。
「ッ……!」
トーゼツは三秒ほど意識を失ってしまう。いいや、正確に言えば三秒の間、魂が消失したことにより死んでしまった。そして、戦闘における三秒とは決して短くない時間。そこにアルウェスは追撃を行う。
「固有術〈クレイジー・スラッシュ〉!」
それは先ほどのあちこちに乱れた斬撃ではなく、確実に大きくダメージを与えるために放たれたその一閃の斬撃はトーゼツを一刀両断し、胴体と脚を引き剥がす。今から胴体がずり落ちて、内臓が地面にばら撒かれるだろう。誰がどう見てもトーゼツは死ぬ。
──のだが、次の瞬間には何事も無かったかのように胴体と脚が繋がっていた。
「……はァ!!」
トーゼツの魂が再生され、意識が戻り、まるで思い出したかのように呼吸を再開する。
「嘘だろッ!?魔術使ってもそうはなら無ェだろ!!」
切断された脚と胴体が一瞬で繋がるその光景は、ありえないモノだ。仮にやるとしても絶大レベルの治癒魔術でなければならないだろう。
(まさか……魂が再生するというのは能力の一部しか過ぎないってことか?)
よりトーゼツの持つ固有技能が分からなくなり、困惑する。
とりあえず、戦っている中で分かった情報の整理と、一旦、態勢を整えるためにアルウェスはバックステップで後方へと下がり、三十メートルほどトーゼツとの距離を置く。
トーゼツは距離を取られる、追いかけなければ!と分かっていたものの、二連続で死んだうえに、まだ復活したばっかりということもあって、意識が良くなく、思考が定まっていなかった。ゆえに体が上手く動かなかった。
「ふぅ……はぁ……!」
トーゼツは慌てることなく呼吸をゆっくり慎重に行い、酸素を脳へと供給する。
その間にもアルウェスはトーゼツの分析を進めていた。
(トーゼツの能力は不死身か?これならば肉体的な再生は説明がつく。でも、魂は違う。魂は永久的な存在であり、欠けることも無ければ消滅することはない。だからこそ、魂には死の概念がない)
アルウェスは能力の場合はその消滅することのない魂を無理やり肉体から引っぺがして自分のモノにしてしまうというこれはまた異質な力なのだが。
それに、人類の歴史において不死身の固有能力を持った者はいたらしいのだが、それら全て何かしらの弱点でや欠点はあったという。
死はないが歳を取り、最終的には生物的には生きているが、ほぼ寝たきりの者。
死なないだけで身体の傷が治癒することはな、四肢をバラバラにされ、脳を取り出され、培養液に入れられて、魔術師の研究素材になってもなお死ぬことなく細胞が活動し、意識のある者。
(まぁ、トーゼツが完全な不死身の力を持った固有能力者というのも……ありえる話なのか?クククッ!やはり、コイツは面白い!!)
この戦いが自分の思い通りにならないこと、そしてトーゼツの異様さに興味を惹かれて嗤いがこぼれるアルウェスであった。




