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死の厄災 8

 アルウェスは魔術で来るか、それとも変わらず剣で来るか。そのように二択で考えて鎌を構えていた。だからこそ、この攻撃を避けることは出来なかった。


 「ァッ!?!?」


 それは背後からであった。


 何かが深く、そして強く突き刺さる感覚に襲われていくと共にどんどんソレは体内へと侵入していき、とうとう胸部からそれで貫通して飛び出してくる。


 それは最初、トーゼツの投げた槍。それがあの杖のように宙に浮いて、まるで意思を持った生き物のようにアルウェスに向かって攻撃してきたのだ。


 (槍を遠隔操作したのか……しかも、これも上級レベルの威力!!)


 やはり、トーゼツは無詠唱、魔法陣もない。であれば、固有能力を使ったナニカしらの力であるのは間違いないはずだ。だが、魔力の動きやトーゼツの行動を観察しても、やはり何も分かることはない。


 「うおおおおッ、上級剣術〈大切断だいせつだん〉!」


 アルウェスの思考の最中でもトーゼツは問答無用で術を発動させて攻撃する。トーゼツのその剣は大きく、重く、力強く振り落とされ、刃がアルウェスの胴体に再び大きな傷を作っていく。しかも、先ほどよりも深く刃が入ってきたようで、血の量も、痛みも、全てが格段に上であった。


 痛覚遮断の魔術を会得していないアルウェスは、ただ必死に痛みに耐える。


 「もう一発、上級魔術〈灼熱拡散しゃくねつかくさん〉!」


 続けて詠唱されると同時に魔法陣が展開される。そして魔法陣を通して魔力が熱に変換され、空気を燃焼。そこからまるでショットガンのように一斉に炎の弾丸が発射される。


 アルウェスはその炎をもろに喰らってしまい、今度は皮膚が焼ける痛みに耐え、意識を失わないように踏ん張っていく。


 このまま深呼吸して、意識を切り替えていきたいのだがトーゼツがそんな猶予を与えることはない。


 トーゼツはアルウェスの胸部から飛び出している槍の先を右手で無理やり掴む。トーゼツの手のひらも槍の刃でズタズタになり、血が流れだすが、そんなのお構いなしで力を右手に力を入れ続ける。それにアルウェスは抵抗するように両手を伸ばし、同じく槍を掴む。


 無理やり引き抜かれてしまったら、凄まじい量の出血をしてしまうだろう。治癒魔術が使えるからって、それは脳が正常な判断、思考が出来るからだ。血液の不足で意識が低下すれば魔術だって発動できなくなる。そうなれば……。


 「させ…ない、ぞ!!」


 アルウェスの口が裂けるかのようにニタニタと嗤いながらも、こぽこぽと血が吐き出てくる。


 しかし、トーゼツの力の方が上だったようだ。一気にアルウェスの体から引き抜かれていく。


 「あァ、ああああァ…っはっはァ!!」


 どれだけの痛みだったのだろうか。最初は聞いた事もないほど恐ろしく、気持ちの悪い悲鳴を上げていた。血も予想通り……いいや、予想以上のの血が流れ出てくる。のだが、次の瞬間にはいつもの嗤いへと戻っていた。

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