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死の厄災 7

 そのようにアルウェスが思考している中でも、トーゼツは剣を大きく振って攻撃を仕掛ける。


 しかし、詠唱もなければ、魔法陣の展開もない。所詮、魔力のみによる攻撃は効くことはない。そうアルウェスは思って無視しようとしたのだが──


 「ッ!!」


 アルウェスの体をすぐさま痛みが駆け抜けていく。どうやったのか、謎だが鎧のように纏っている魔力の膜をトーゼツの剣が貫通してきたようだ。胴体が上から下に向かって大きく斬られていく。


 だが、魔力の膜がかなり威力を抑えてくれていたようだ。本来であれば臓器が出てきてもおかしくはない斬られ方だが、傷から滲み出るのは多少の血であった。


 「っしッ!!まだまだァ!」


 振り下ろされていた剣の刃を返し、今度は下から上へと斬り上げ、アルウェスの右腕の付け根に深い斬り込みを入れる。どうやらこのまま腕を斬り落とすつもりらしい。


 それを許すほどアルウェスは優しくはない。


 魔力を込めた脚でトーゼツの腹部に蹴りを入れる。


 攻撃に集中していたため、受け身を取れず、脚に力を入れて踏ん張りを効かすことも出来なかった。そのままトーゼツは地面に何度もバウンドしながら後方数十メートル吹っ飛ばされる。


 (上級剣術の無詠唱発動!?だが、トーゼツは役職なし、神の加護を持たない者。そんなトーゼツが可能なのか?もしくは固有能力が関係しているのか?)


 出来た傷を癒しながら、アルウェスは必死に思考する。


 圧倒的な魔力がある分、こちらの方が圧倒的に優位だと思っていた。攻撃も防御も後先考えず、魔力を気にせず使用出来るのだから。だが、攻撃が普通に届くというのであれば話は別。


 (早くトーゼツの固有能力を把握しないと、この勝負。負ける!)


 アルウェスは追撃に出ることはなく、そのまま止まってトーゼツを警戒し、様子見をしている。


 トーゼツは何度も地面をバウンドしたことで体のあちこちが痛んでいた。だが、それよりもトーゼツは心の中でガッツポーズを取り、喜んでいた。


 (また強制的に距離を取られた!だが、攻撃が効いたぞ、このまま押していく!)


 トーゼツは指輪の力で空間に穴を開け、そこから取り出したのは一本の杖。


 「ここからは手数を増やしてくるつもりか!はははッ、やっぱりトーゼツ、君は楽しませてくれる!!」


 自分が死ぬかもしれない、負けるかもしれない。そういう戦いなのだ。というのに、変わらずアルウェスは嗤っている。それはトーゼツに対してのモノでもあり、自分へ向けた嗤いでもあった。これほど余裕があって、魔力量という大きなアドバンテージがあるというのに、負けるかもしれない惨めな自分を心の底から侮蔑して嗤っているのだ。


 「その顔、今すぐぶち壊してやる!!」


 トーゼツは剣を構えて、力強く地面を駆け出す。先ほど彼が取り出した杖は彼の背中を追いかけるように宙に浮いてついてきていた。

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