死の厄災 6
二十秒という時間が過ぎて……先に動き出したのはトーゼツであった。
「中級魔術〈炎纏〉!」
その詠唱と共にトーゼツの体から炎が巻き起こり、その炎全てが槍へとまとわりつく。
そこからさらに素早く続けて術を発動させる。
「上級槍術〈ラピダス・ペネトレイト〉!」
トーゼツの動きが一切、見えなかった。しかし、詠唱が終わり、発動し終わった時には既に凄まじい速度でトーゼツの槍がアルウェスに向けて投擲されていた。
それに対し、アルウェスもまた魔術を展開する。
「中級魔術〈硬度防壁〉!」
アルウェスの目の前に魔法陣が展開されたかと思えば、次の瞬間には巨大な魔力の壁が出来ていた。真っ直ぐ飛んでいた槍はその魔力の壁に衝突する。のだが、最初こそは槍を受け止めていたその壁はパキ、パキパキとヒビが入り出す。そしてとうとう、壁は壊され、アルウェスへとその槍は到達する。
だが、〈硬度防壁〉は充分な働きをしてくれたようだ。威力は半減されており、〈炎纏〉の効果も切れてしまっているようだ。こうなってしまえば何の脅威でもない、アルウェスは鎌で簡単にはじいて見せる。
その瞬間、アルウェスの体に衝撃が駆け抜ける。
アルウェスは槍の方に意識を向いていたため、気づいていなかったのだが、どうやら、槍を投げた瞬間にトーゼツも移動を開始していたようだ。トーゼツは剣を持ってアルウェスの胴体に向けて斬りかかっていた。
ダメージはない。多大な魔力量で身を守っているためだ。魔力と通して衝撃だけが体に伝わってくる。
「くそッ、硬い!」
一応、無詠唱で下級剣術〈シャープ・ブレイド〉を発動させていたのだが、それでもアルウェスにダメージを与えることは出来なかった。事前に予想できていたことではあったが、やはり下級、中級程度ではこの魔力の膜を貫通することはできないようだ。
この魔力の鎧を超えて、肉体ダメージを与えるには最低上級レベルの術じゃないと無理のようだ。
「上級──」
トーゼツが次の攻撃のために詠唱しようとした。が、アルウェスは問答無用で鎌で斬りつけ、魂を刈り取る。本来であれば、魂を刈り取られた者は死んでしまうのだが……。
ガクンッ!と一瞬、体の力が抜けてしまったのか、トーゼツは大きく態勢を崩す。しかし、
「おっらァァ!」
すぐさま剣を強く握り直し、大きく振ってアルウェスの胴体を斬る。だが、やはり一切ダメージはない。
(やはり、魂を刈り取っているのにその魂が復活している)
だが、それよりもアルウェスが驚愕しているのは、刈り取ったトーゼツの魂はちゃんと取り込み、自分の力の一部になっているというところであった。
(魂が戻っているのではなく、魂が新たに生成されている?)
それだけではない。魔力量だってやはり増加している。
トーゼツの内部で一体、何が起こっているというのだろうか。




