死の厄災 5
ロームフとエルドの二人はすぐさまミトラへと駆け寄り、トーゼツの戦闘の邪魔にならないように倒れているミトラと一緒に離れようとする。
だが、アルウェスはそれを逃さぬように、脚に魔力を込め、一瞬で三人の間合いを詰めようとする。
「させねぇって言ってんだろ!」
そこにトーゼツが前に出て立ちはだかり、アルウェスを止める。
ガチガチ、と鍔迫り合いのように槍と巨大な鎌が火花を散らして拮抗し合う。
トーゼツは二つの武器がぶつかり合うその先にいる敵のアルウェスを見ている。だが、アルウェスは決してトーゼツを見ておらず、その目線の先には三人であった。
「おいおい、浮気か?」
「いやいや、先に雑魚を倒す。これがセオリーだろ。それに守らないといけないモノが近くにありながら戦うのは難しいだろ?俺は戦うのは好きだけど、負けるのは嫌いでねェ!」
鎌に帯びていた魔力がさらに増強され、拮抗状態が壊され、押されていくトーゼツ。
「自分に有利な状況で戦わせてもらうよ」
「くそッ!」
トーゼツは自分から槍を引いて後ろへ下がる。そしてすぐさま後方にいる三人を守るように戦いの構えを取る。
「どうやらアルウェスは私たちを見逃すつもりはないようだな。エルド、多少は魔力が回復しているんだろう?だったらバリアを展開してくれないか?」
そう言われ、エルドは自分を含め、ロームフ、ミトラの三人を守るようにドーム型のバリアを展開する。
「それだったら、まだ戦いやすいな。サンキュー」
「……悪いな、足手纏いになっちまって」
自分が一緒に戦えないことに……自分がまだまだ弱く、不甲斐ないことに怒りを覚えながら、自分たちを守ってくれるトーゼツにミトラは謝罪の言葉を送る。
「良いよ、別に。それに邪魔になるからって離脱する必要はないよ。そこであの野郎をぶっ潰すとこを是非見ていてくれよ」
そうしてトーゼツは構えを変え、攻めの態勢に入る。
「へぇ、言ってくれるじゃないか!」
アルウェスもまた戦いの構えを撮り直す。
二人は睨み合う。お互い、攻撃の態勢を取りながらもすぐにどんな攻撃が来ても防御できるように警戒し、観察している。
(アイツはあの調和神アフラを倒したんだ……初っ端から本気でいかないと…!)
トーゼツは深呼吸し、魔力を纏い、どのように攻めるか。思考を巡らせる。
(俺の魂を刈り取る力を無効化するんだ…ククッ、簡単には殺せないだろうな)
アルウェスもまた、舐めてかかるような事はなかった。無論、魔力量で言えば圧倒的にアルウェスの方が上。現在、複数の魂を保有している彼は、アナトよりも、サルワよりも……神であるアムシャをも遥かに超えている。ゴリ押しでも充分勝てるだろう。
もちろん、魔力量だけで戦いの全てが決まるわけではない。あらゆる技術、経験でそれを簡単に乗り越えてくる者たちだっている。それが先ほども名が挙がったアナトやサルワ達になるのだが。
しかし、アルウェスが警戒しているのはそういうものではない。
彼が警戒しているもの、それはトーゼツの持つ固有能力である。
過去に戦った時、刈り取った魂が復活し、魔力量も増えていた。魂に関する能力であるということだけが分かっているのだが……他に隠されている力があるかもしれない。
(そもそも肉体的死も無効、魂をも復活させる……さて、どう攻略するか!)
アルウェスの口角が上がり、その表情からは嗤いが溢れている。




