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死の厄災 3

 アルウェスはその剣を受け止めようとするが、防御系の魔術を発動させるのには時間が足りない。魔力によってバリアを展開しても、それは無駄に終わるだろう。であっても彼女の絶大剣術〈一刃斬断いちじんざんだん〉を正面から受け切るつもりはない。


 右手に魂を宿らせ、莫大な魔力量を纏わせる。


 (右手で受け止めるつもりか、舐めやがって!!)


 そのままアルウェスの右手を切り裂いてやる、そのように思いながらミトラは刃を迷うことなく彼に向けて強く振り下ろしていく。


 「ッ!!」


 アルウェスは右手で刃を受け止めたその瞬間、これまでにない力が押しかかってくる。それはまるで鉄の塊……少なくとも十トンはあると感じてしまうほどの重量感。あらゆるモノを押し斬って進まんとするほど高威力の刃と魔力。


 「おいおい、まじかよ!魂一人分の魔力だぞ!」


 人間一人が一生分の命を燃やしても耐えきれないほどの剣術だというのか!?


 「はっはっはァ!こんな一手を残してたのかよ!さすがだな、剣聖ミトラ・アルファイン!」


 どうやら自分の力に自惚れていたようだ。魂の力を刈り取り、それを取り込む。それは自分が戦士として最強になれる力であり、自分にとって敵と見做せる者がいなくなるということでもあった。


 調和神アフラさえも超えることの出来る力。誰も敵わないものだと思っていた。


 世界が退屈なモノになってしまうと考えてしまった。


 だが──


 (剣聖とはいえ、最強には程遠いミトラ・アルファインがこれほどの威力を出せるのだ。ならば、戦神と呼ばれるアナトは……支配の厄災であるサルワは……!俺たちを生み出したあの人は……!!)


 「やはり世界は面白い!こんなにも自分の予想外が広がってるんだから!!」


 アルウェスはもっと魔力を右手に集める。それはもう一人分の魂の魔力量ではない。


 「なん、だッ…この魔力量!?」


 それはアルウェスでも抑えきれないほどの魔力量。三人分の魂であった。


 あんなに重く、強く感じていた刃が一気に軽くなり、逆に振り下ろされている刃がどんどんアルウェスの右手で押し上げられている。


 「あっ!あぁ!!?_」


 ミトラは困惑する。


 ただの魔力を纏っただけの右手が、攻撃を受け止めるのはまだしも、絶大剣術である〈一刃斬断いちじんだんざん〉を押し上げるなんて……。


 歯を食い縛り、ミトラはより腕に力を込める。しかし、既に彼女の魔力は底まで尽くしていた。身体能力向上させれるほどの魔力はなく、頼りになるのは素の筋力。


 それでミトラが勝てるわけがない。


 でも、諦めることだって出来ない。


 最後の最後まで力を入れ続け、抵抗するのだが──


 「ふんッ!!!」


 アルウェスはとうとう、〈一刃斬断いちじんざんだん〉に押し上げ、剣をはじく。そこから剣はミトラの後方へと飛んでいき、数秒後には地面に落ちるのであった。

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