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侵攻 2

 ベスは一人ずつ確認するが、やはり相手は全員エルフ。そして、全員が魔術の杖を持っている。となると、この集団が何者であるのか。思い当たるのは一つしかない。

 「お前らは……メイガス・ユニオン!」


 「そういう貴様は……知っているぞ。ベス・デルヘットか」


 ベスの言葉に反応しながらエルフの集団から一人、前へと出るのは軍服を着た男。胸には階級を示すバッジをつけている。きっとこの集団を指揮している者なのだろう。


 戦闘用に作られているのであろう杖は一眼見て一級品の魔具であると分かる。彼の保有している魔力量も、集団の中では飛び抜けていることから戦士としても一流だ。


 「傭兵としてあちこち暴れていたが……まさか冒険者になっているとはな」


 「へぇ、俺の事を知ってるのか?だったら分かるだろ」


 「えぇ、分かっているとも。貴様が……いいや、貴様らがこの世に必要のない種族(者たち)であるということがな」


 その指揮官の言葉に合わせるように、魔術師たちが魔法陣を展開し、魔力弾を放つ準備を始める。


 「ちぃッ、対話は通用しないってわけか……!!」


 どうする?


 周囲は化け物だらけ。フードの者たちだって活動しているし、気配が消えたため、どのような状態か分からないが厄災だって闊歩している。


 また新都内に引き返すことは出来ない。


 避難経路だった場所はメイガス・ユニオンの部隊が展開されている。


 「劣等種族は不要、殲滅しろ!!」


 くそっ、考えさせてくれる時間もくれないか!?


 「中級魔術〈マジック・バリア〉!」


 ベスは魔力弾から後方にいる一般市民、冒険者を守るように大きな壁型のバリアを展開する。


 剣士としての腕は剣聖に引けを取らない。戦士としては一流の実力。だが、決してベスは魔術師ではない。〈マジック・バリア〉はどんどん襲いかかってくる魔力弾を防いでくれている。が、バリアが破壊されるまで時間の問題だ。さて、いつまで持つか……。


 「ここは一旦、引くべきだ」


 そのようにベスの隣に立ち、意見を述べるのはウェルベスであった。


 「どうせ前には進めない。であれば、別の門から市民を避難させるべきだ」


 「……」


 嫌な考えがベスによぎる。


 新都内に入る門は八つ。


 東西南北の四つに、北東、北西、南東、南西の四つで合計八つの門。


 その全ての門から、メイガス・ユニオンの兵士が侵攻してきているとしたら……、


 「分かっている」


 ウェルベスも弓聖という実力者であり、ベスよりも経験豊富の老戦士。ベスの考えていることなど、とっさに思いついている。


 「だが、この魔術師たちを突破しながら、周囲の化け物から市民を守り、神都から脱出させる。なんてことは出来ない。じゃったら、もう少し、可能性のある方に──」


 「……そうだな」


 パキパキ、とバリアにヒビが入る。


 もう考えている時間はない。判断を下さなければならない。


 「一旦、新都内に引き返す。市民の避難はウェルベス、アンタに任せる。どうせメイガス・ユニオンが追ってくるだろうから、俺があの魔術師たちを相手してから離脱する」


 「……分かった。アンタは死ぬような器じゃないと思っとるが。まぁ、死なぬようにな」


 そう言って、ウェルベスの〈マジック・バリア〉が破壊されてしまう前に市民を誘導して来た道を引き返していくウェルベス達であった。

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