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侵攻

 場所は戻り、そこは一般市民の避難を行なっている神都北西方面。そこではアナーヒターの代理として市民の避難誘導及び、化け物を殺し避難経路確保をするのはベスがいた。


 「はぁ、はぁ。さすがに連戦続きは疲れる!」


 そのように愚痴りながらも剣を振り続け、化け物を蹂躙する。


 その姿はアナーヒターに引けを取らない戦いっぷりである。


 「それに、異常なほど体が暑い……頭も痛いな」


 「それは酒を呑んどるからじゃろ」


 そのようにベスのセリフに反応するのは、後方から弓矢で支援している弓聖ウェルベスである。


 「アンタも俺の酒、呑んだろ」


 「ワシは酒に強くてな!」


 がはは、とその老人は豪快に笑い飛ばす。


 「ったく、俺もだが、アンタも相当だな」


 そういって、ベスはこちらに向かってくる触手全てを斬り捨てる。


 「はぁ〜、しかしマジで敵が多すぎる。一人だけだったらまだしも、守護対象がいるっていうのがめんどくさいんだよなぁ。自由に動けないし」


 一人だったら広範囲の魔術、剣術使えるし、建物を壊して瓦礫で化け物を押し潰すとか、そういう手が使えるというのに。また一時撤退なども選択肢として取れる。だが、こうなれば剣で、周りを巻き込まないように、確実に敵を倒すという手段しか選べない。


 「まぁ、そう言うな。冒険者というのは人を守る仕事と言っても過言じゃない。じゃろう?」


 「俺は好きで冒険者になったわけじゃない!」


 手を動かし、敵を倒し、前へ前へと進みながらそのようにベスは言う。


 元々、自分は傭兵だった。


 戦場を出て、人を殺して、どんな依頼でも金さえ出せば動いた犯罪者。裏の社会では誰しもが聞いたことのあるほど知れ渡った名。


 それこそがベスだった。


 そんな自分が一体、どんなふうに道を踏み外せば冒険者に成ってしまうのだろうか。


 その経緯を知っていたウェルベスは再び豪快に笑う。


 「はっはっは、アフラ様に目をつけられてしまったのが運の尽きってやつよ。まっ、これ以上文句を言ってもしょうがなかろう。それに、ホレ、もう終わるようじゃぞ」


 気づけば、目の前には神都を外敵から守るために、神都を囲っている巨大な防壁。その防壁から出るための北西門が見えてくる。


 あの門から一般市民を出せば……


 「やっとか!」


 永遠に続くかと感じた仕事がようやく終わる。あれは希望の門だ。


 終わりが見えてくれば、気も楽になる。そこに「最後まで油断するなよ」と釘を刺すウェルベス。そんな言葉さえも、ベスの中ではどうでも良かった。それほどまでに気分が良い。


 だが、その数秒後……


 「は?」


 ベスはを含めたその場にいた全員が、絶望する。


 それは一瞬だった。


 目の前から一斉に放たれた魔力弾が、一般市民と冒険者たちを撃ち抜いた。


 何が起こっているのか、ベスの思考が停止する。


 「ふむ、この状況。どうやら一般市民を冒険者が避難誘導しているところ、という感じか」


 そうして現れたのは、エルフの集団であった。

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