刃の厄災 7
ミトラは、足を崩す。
それは、戦いに疲れたからなのか。それとも体に無茶を効かした痛みからなのか。それとも、もう動く様子の無い化け物の姿を見て安堵したものなのか。
「はぁ、はぁ!!」
深く、喜びながら呼吸を繰り返すミトラ。しかし—
「良い、とても素晴らしい剣術だ」
その声は、彼女を再び絶望の淵へと叩きつける。
刃の厄災の切断面から、血管のようなもの黒い線が触手のように動き、飛び出し、断面を接着し、繋げ合わせていく。ねちゃねちゃ、と気持ち悪いほどに。
そうして、数秒後、首と胴体の繋ぎ合わせに完了した化け物は、がちゃり、と鎧の音を立てながら、なんとも無かったかのように、立ち上がる。
「この我が危険だと思うほどにはな。だが、体を切断した程度では我の肉体が滅びることはない。仮に切断して殺すのであれば、再生が難しいほどに細切れにしなくてはな」
ミトラは崩れていた足を震えながらも、無理やり立たせ、痛みで門節しながらも、剣を持って構える。
「魔力量は最初の半分以下。肉体も負傷している。魔力による肉体能力向上ではカバーしきれないほどのものだ。それをお前は分かっているはずだ」
刃の厄災は問う。
それは、賞賛に近く、それでいて理解できないこの状況への問いかけであった。
どんなに不利でも、戦いの意志を見せてくる彼女の心の強さ。負けると理解していながらも、まだ勝てると信じているその眼差し。それは刃の厄災も感嘆するほどのものであった。
しかし、なぜそこまで頑張るのか。何がミトラを突き動かしているのかという疑問。
その二つを、彼女へと問いかけたのだ。
「……簡単なことだよ」
彼女は、無理やりにでも口角を上げ、笑う。
「結果は死ぬかもしれない。もしくは、勝つ可能性が少しでも残っているのかもしれない。でも、これだけは言える。結果がどうあれ、それで諦める理由にはならない」
それを聞いた刃の厄災は―
「ハハハハハハハハッ!良いなァ、良いことだ!誠に良き心構えの剣士よ!!剣士に限らず、多くの戦士の者と戦ってきたが、ここまでの心構えの者は初めてよ!」
刃の厄災は、右手に魔力を集中させる。
「今の我は気分が良い。せっかくだ、我の技を受けて逝け!」
集中した魔力は、徐々に剣の形へと変化。そのまま具現化されていく。
それは、先ほどまで使っていた大剣とは違い、一本のロングソード。
そこからさらに、そのロングソードへと魔力が集まりだす。
「我は刃の厄災。剣を恐る想いから生まれた悪魔。その恐怖を、その身に刻め!!』
大きくその剣を振りかざし、一気に振り下ろす。
まだ、ミトラとの距離はある。剣が届く範囲内では決して無い。しかし、彼は止まらない。
「〈エスターブ〉!」
それは、刃から放たれる漆黒の斬撃。
地面を削りながら、それでいて速度は変わらず、真っ直ぐミトラへと襲いかかってくる斬撃であった。




