憤怒の厄災 7
ミトラの発動させた絶大剣術〈グラディウス・プンジェレ〉と、それに対抗して放たれた憤怒の厄災の〈アクゼリュス〉。それはどんどん距離を縮め、とうとう正面からぶつかる。
ぶつかったことによって生まれた衝撃は、どれほど凄まじい力なのか。それはまるで竜巻のような突風が発生し、周囲の建物は跡形もなく崩れ去っていく。
「なんて、衝撃なん…だ!!」
エルドもまたその突風で吹っ飛ばされそうになるのだが、すぐに杖を地面に深く突き立て、杖を支えにして耐え忍ぶ。ロームフもまた、その突風に対し、地面にしがみついている。
「互角か……であれば、もっと!!」
憤怒の厄災はさらに魔力を術に注ぎ込み、威力を底上げする。
拮抗状態であった二つの力は、その均衡が崩れかける。〈アクゼリュス〉が〈グラディウス・プンジュレ〉を押し返し、どんどんミトラに接近してくる。
ミトラも負けじと魔力を更に術に注いでいく。しかし、ミトラ一人の魔力だけでは足りないようだ。一瞬、拮抗状態へと戻ったのだが、すぐさまジリジリと押し負けていく。
「時間の問題だな。勝負あったぞ!」
憤怒の厄災はもうミトラでは押し返せないと理解し、さらなる量の魔力を送る。
「くッ、このまま……じゃ…あ!!!」
〈アクゼリュス〉の威力はとてつもないレベルになっており、一瞬でも気を抜けば態勢が崩れ、あっという間に決着がついてしまうだろう。気合いを入れ直し、剣をもっと強く握りしめ、脚に力を入れる。
だが、気合いだけでは結果は覆らない。
どうすれば……。
この状況の打開策は……!?
「耐えろ、ミトラ!」
その言葉と共にミトラの持つ魔力量が跳ね上がる。
それはエルドの魔力であった。彼は自分の魔力をミトラへと送り、支援する。
「俺の魔力も使ってくれ!」
ロームフもまた、エルド同様にミトラへと魔力を送る。
「これほどの量なら、押し切れる!!」
ミトラはそのように確信を得る。だがそれよりも心配なのは──
ちらり、と二人の様子を見る。
もしも今、目の前にいる憤怒の厄災を倒すことに成功しても、ここは化け物が闊歩する戦場。ここで全力を尽くして仕舞えば、あとは化け物に蹂躙されるだけだ。
だが、そんなことを考慮すらしていないようだ。必死の表情で、全部の魔力を与えるつもりで二人はひたすらミトラへと魔力を送り続けている。
「馬鹿ね、アンタ達!まっ、そこまで私に力を貸してくれているんだから、魔力切れでぶっ倒れても安心して。あとのことは任せろ!!」
そうしてミトラの発動している絶大剣術〈グラディウス・プンジェレ〉は勢いを取り戻し、先ほどまで負けていたとは思えないほどのスピードでどんどん〈アクゼリュス〉を押し返す。
「お……オぉ!!」
憤怒の厄災は戸惑いながらも、負けじと魔力を送るのだが──
「くッ…そがァ!!」
とうとう憤怒の厄災は〈グラディス・プンジェレ〉を直撃し、肉体の崩壊が始まる。
「こんな……雑魚に!こんな、未熟な………奴らに!!屈辱だッ、屈辱的だァァァァァァァァァ!!」
最後まで怒りの咆哮をあげながら、消滅していくのであった。




