表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
328/606

憤怒の厄災 6

 憤怒の厄災はミトラの詠唱の阻害、または剣撃の届かない程度には距離を取ろうと考え、新たに数本の鎖を生成。彼女に向かって鞭のように放とうとするのだが──


 「上級魔術〈光縛こうばく〉!」


 またもや光の触手が出現し、憤怒の厄災と鎖に絡みつき、動きを制限してくる。


 「ちぃッ!またキサマの術か!!!」


 その怒気を纏った咆哮は恐ろしく、しかし


 「〈ケレリタス〉!」


 それは、一筋の光。刃がまるで、進む先にある障害すべてを焼き切るかのような、明るく、鋭い光の線のようになってが鎖ごと憤怒の厄災を切断しようとする。


 その光に憤怒の厄災は最初こそ耐えていたのだが、やはり凄まじい威力の術だったからだろう。光を共に建物の壁を何度も砕き、破壊しながら後方数百メートルへと吹っ飛ばされる。


 「これなら……どう──」


 明らかな致命的ダメージ。勝ち筋が見えてきたことによってミトラの顔に喜びが見えてくるのだが、それと同時に鼻から血がたらり、と流れる。


 上級剣術を無詠唱、しかも二つ掛けで、そこに間髪入れず絶大剣術を放ったのだ。剣聖であってもかなり脳に負担をかけてしまっているのは当然だ。


 がくり、とミトラもまた態勢を大きく崩し、しかし落ち着いて呼吸する。


 「はぁ……はぁ……!」


 落ち着け、落ち着け!


 まだ、いける。


 あと数回程度なら絶大級の術も発動可能。


 このまま一気に蹴りをつける!


 「絶大剣術!!!」


 ぶわり、とミトラの持つ剣の刃に纏われている魔力が一気に増大し、渦を巻き始める。


 「これほどの距離からの絶大剣術、か」


 ガラガラ、と崩壊した壁の瓦礫を退かしながら憤怒の厄災は立ち上がる。


 (距離は約三百メートルといった所か。さすがに術と言えども、剣は近距離専門。これほど離れていればかなり威力は下がるはず。だが、発動しようとしているのは絶大剣術。規格外の威力を持つ術だ。侮ることは出来ない。それに俺の知らないだけで遠距離用の剣術がある可能性も捨てきれない)


 明らかにミトラはこの勝負を終わらせようとしている。ならば──


 「こちらも本気の一撃をいかせてもらう」


 憤怒の厄災の体内から一気に魔力が解き放たれる。そして、右手に集約させ、詠唱を開始する。


 「これは慈悲ではない。勝利への喜びもない。在るのは全てを破壊する怒りである。残酷な一撃を今、ここに放つ」


 一体、どれほどの魔力量なのか。空間が震撼し、大地が悲鳴を上げている。


 しかし、ミトラも負けてはいない。


 エルドとロームフから魔力供給され、身体能力に集中力が更に跳ね上がる。


 今、彼女の肉体は憤怒の厄災を完全に超えている。


 二つの莫大な力が、今、放たれようとしている。


 「これで終わりだッ、〈グラディウス・プンジェレ〉!」


 振り下ろされた剣から強く、凄まじいパワーで魔力が放出される。


 「〈アクゼリュス〉!」


 しかし、それに負けない量の魔力が憤怒の厄災からも放たれるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ