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暴力 4

 イルゼの拳に当たるのは危険だと分かっている。しかし、凄まじいパワーで繰り出される拳を真正面から受け止めることは出来ない。アナーヒターは杖でその攻撃を器用に逸らしていく。


 それでも杖から伝わってくる拳の衝撃は体を痺れさせる。


 「オラァ、このままぶっ殺してやるよォ!」


 どんどん拳を繰り出すスピードを上げていくイルゼ。反撃の隙も与えないつもりのようだ。


 しかし、アナーヒターは既に反撃の準備は済ませていた。


 「おい、私だけに集中してると痛い目に遭うぞ」


 その発言の瞬間だった。


 イルゼの体にドスドスッ!と何かが食い込んでくる痛みがあった。


 「ッ!!」


 それは、破壊した防御魔術〈リベリオン〉のカケラ。ガラスのように砕けたその破片の形が変化し、魔力の弾丸となって次々にイルゼの体へ発射される。


 体を覆っていた魔力によってその魔力弾は貫通こそしなかったが、体のあちこちに突き刺さっていく。


 突然の反撃で怯み、痛みで思考が鈍る。その好機をアナーヒターは逃さない。今度はアナーヒターが杖を下から上へと勢いよく振り上げ、イルゼへと殴りかかる。


 だが、イルゼはその手で杖を受け止め、強く掴む。


 それは鈍った思考の中で取った必死の判断。いいや、思考さえしていないのかもしれない。


 ただ、目の前にいるこの女との戦いに勝ちたい。殺したい。自分が強いということを証明したいという闘争本能がイルゼを突き動かした結果、取った行動と言える。


 しかし、さらなる衝撃がイルゼに襲い掛かる。どうやらまだバリアの破片が残っていたようだ。


 それでも、杖を離さない。


 アナーヒターは腕に力を入れ、なんとかイルゼを引き剥がそうとするのだが、彼女の握力は凄まじいものでビクともしなかった。


 そして、イルゼはまたもや闘争本能によって攻撃を無意識に入れる。


 バンッ!とアナーヒターの顔面に拳がめり込み、逆に自分の杖をアナーヒターが離してしまう。


 「ここだァ!!」


 ようやく鈍っていた思考が正常に戻り、二発、三発と拳を入れる。


 その腕力に抵抗できず、アナーヒターは後方十メートルほども吹っ飛ばされる。


 また、杖の効果であったのか。みるみると彼女の魔力量も減量していく。それでもなお、イルゼの数倍以上、化け物レベルの魔力量というのには変わりなかったのだが。


 「ちぃッ!やりやがって!!」


 歯が何本も折れ、口の中から鉄の味が広がる。また鼻の骨もやられたようだ。顔に少し拳の跡も残っている。


 やはり痛みが体の中で何度も、何度も反射しているようで、苦痛で体が動かない。魔術ですぐさま治癒したし、常に痛覚遮断は発動させている。のにも関わらず、この痛みだ。


 「まぁ、問題はない。侮れない相手というのは事前に分かっていたはずだ」


 そのように言い聞かせ、彼女は立ち上がる。

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