天変地異 7
刃による圧倒的物量の攻撃……それだけであれば何も問題は無かっただろう。
しかし、アムシャとアナトに襲い掛かってくるのはそれだけではなかった。
魔力の動きが遅い。
本来ならばもっと素早く精密な魔力操作が出来るというのに、全く体に追いついていない。
「やはり魔力が安定しないな。完全に魔力操作を阻害出来るわけじゃないようだが……こればかりはうざったいな!」
アムシャはそのようにつぶやきながらも冷静に襲ってくる刃に対処する。
「またこの辺りを絶大魔術で……って展開時間も与えないつもりのようね!!」
アナトは槍で刃を薙ぎ折っていくのだが、次の瞬間にはもう次の刃が向かってきている。しかも、津波のように数えきれないほどの刃がだ。
魔力量にはまだ余裕がある。肉体と脳の負荷も問題はない。しかし、もう一度〈ギガ・ブラスト〉並みの威力を出そうものならさすがに魔法陣の展開と詠唱が必要不可欠。
全てを省略して放つ絶大レベルの術でこの状況を打開することは難しいだろう。
さらにそこに追い打ちをかけように二人に襲い掛かってくる力があった。
アムシャとアナト。同時に突然ぐらり、と態勢が崩れたかと思えば凄まじい力で後方へと吹っ飛ばされていく。それはこの空中都市を作り出している力と同じモノ。
物体を動かす浮遊魔術ではない。やはり支配の能力で何かを操っている。しかし、風ではない。アナトには何を支配して物体を動かしているのか。想像がつかない。
そして、巨大な神都の一部、建物がアナトを押しつぶそうと向かってくる。
「やる事、する事、全部同じ手だな!!」
やはり規模が大きいだけで芸がない。
アナトは槍に魔力を纏わせ、強く右から左へと振り払う。それはどれほど強い力で槍を振ったのか。魔力を帯びた強い衝撃波が発生し、それが建物を破壊する。
しかし、壊された建物の瓦礫が全て刃へと変換されてアナトに向かってくる。
それを予想出来ていなかったのか。アナトは一部の槍を避け、槍で破壊することは出来たのだが一部はアナトの身体に突き刺さる。
「ッ!!」
アナトが体に纏っている魔力は緻密で膨大。本来であれば刃は肉体にすら到達しなかっただろう。しかし、彼女も気づかないうちにかなりの魔力量を消費していたのか。それは魔力の膜を貫いてきたのだ。それでも魔力の膜によって威力を半減出来たようで皮膚に掠りはしたものの、肉や骨にまでは到達することはなかった。
魔術によって痛覚遮断しているため苦しみはない。ダメージも皮膚までだからそれほどない。しかし、それでも予想していなかった事が起こったことで思考にラグが生じる。
その機をサルワは逃すことなく、新たな建物と刃をアナトに向けて放っていく。
「ちぃッ!うざったい!」
アナトはすぐさま思考を切り替え、右手のひらに魔力を込める。するとその魔力は炎エネルギーへと変換され、小さな太陽を作り出す。それを握り潰し、周囲一帯に強い熱気と炎を巻き散らす。建物、刃全てが燃え尽き、灰も残らず消えていく。




