天変地異 6
アナトはまたか、なんて思いながら浮く瓦礫、地面を足場に移動しながら敵であるアムシャ、サルワの位置を確認する。
しかし、魔力で抵抗出来ないうえ、絶大魔術でも可能かどうか分からないほどのこの力は、一体サルワは何を支配して可能にしているのか。やはりアナトには予想がつかなかった。
しかし、アムシャはすぐに自分の身に何が起こっていたのか。この状況をどうやって生み出しているのか、その全てを理解していた。
(さきほど、魔力が安定せずに発せられなかった。つまり、奴は俺とアナトの魔力に干渉していたということだ。まさか、格上相手の魔力操作を阻害させることも出来るとはな)
しかし、考えてみれば当たり前な事なのかもしれない。
厄災と言えど、その出自は人間のあらゆる恐怖する想いから生まれ、世界を滅ぼそうとし、調和神アフラとそのほかの神々を相手にして勝ち、封印してようやく止まった悪神から零れ落ちた力だ。
言わば悪神の権能を引き継いだ悪魔……いいや、神と同格と言っても良いかもしれない。とすれば、支配の能力とは、つまりは悪神の権能の一つと考えられる。
その神の権能が格上の相手だから効かない、なんて事はないだろう。
今はまだサルワは弱い。
アナトやアムシャのような絶大魔術を出せるわけではないし、魔力量でも劣っている。それでも、新たな厄災の力を手に入れた時は。戦いの中で学び、成長すれば──
「やはり、まだまだ実力は弱いが……クククッ!凄まじい可能性だな!!」
アムシャは魔術によるものなのか。それとも神の力なのか。分からないが空中をまるで鳥のように……いいや、鳥などよりも自由に空中を滑空していく。
「さて、あの二人は──」
この空中都市となった世界で二人を見失ったアムシャは気配で何処に誰が居るのか。感知しようとしたその瞬間だった。
ザクリ、と体を何かが貫く。
この感覚、雰囲気……アムシャは一度、この攻撃を喰らったことがある。
それは背後に浮いていた瓦礫。そこから植物のように刃が生え、大きく伸びてアムシャの肉体を貫いているではないか。
「刃の厄災の能力!!」
油断していた。
そうか。刃の厄災の能力であらゆる物質、エネルギーから刃を具現化、生成することが可能。であるならばこの状況はまさに
「私の独壇場だ!」
アムシャ、アナトに向けて数えきれないほどの剣のような刃が何処からともなく現れ、伸び進んでくるではないか。まさに刃の津波のようだ。
「ちぃッ、うざったい!」
アナトはその刃全てを槍で薙ぎ払うが、しかし続々と新たな刃が発生する。
アムシャも自由に滑空しその刃を避けていくのだが、そのたびに方向変換し追跡してくる。
「ははッ!技術で勝てないから物量で来るか!」
アムシャもまた避けきれないと思ったモノは剣で斬っていくのだが、やはり無駄であると言わんばかりに新たな刃が追加で襲い掛かってくる。




