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天変地異

 サルワとアナトへの戦いへと場面は戻る。


 相変わらずサルワは支配の厄災の力を用いて、周囲の建物を軽々と宙へと持ち上げ、それをアナトに向けて何度も発射させていた。


 「ったく、やる事が派手だな!」


 冷静に状況を分析すると、アナトは向かってくる建物の窓に飛び入り、建物の中を駆け抜け、反対側の窓から飛び出る。


 しかし、その先にも建物がアナトを押しつぶさんといくつも向かってきており、またその周囲にも発射させる次弾として宙に浮いている建物ふがあった。その光景はまさに空中都市のようであった。


 魔術にも、手を使わず物体を浮かべる方法などはいくらでもある。それを瓦礫や倒木レベルを浮かべるのはまだしも、建物まるごと……しかも同時にいくつもの建物を自由自在に動かすなど、アナトの常識ではありえない。


 だからこそ、彼女は笑っていた。


 彼女もまた、最強と呼ばれ、神代の終末者と呼ばれ、神のように冒険者から敬われている。


 この地点に到達してからは、彼女にとっての敵などこれまでいなかった。


 ゆえに──


 「はははッ!楽しいねェ、サルワ!でも、何度も同じ手で攻撃してくるのは芸が無いんじゃない?」


 アナトは右手に炎を生み出す。


 しかし、ただの炎ではない。


 それはまるで、小さな一個の太陽であった。


 それを彼女は手で握り潰すと、その太陽から一気に炎が舞い上がり、建物を燃やし尽くす。それは木材、レンガ一個も残さず、灰すらも燃えて消えていく。


 その範囲は凄まじいもので、地上にいたサルワも巻き込んでいく。


 「ちぃッ!無詠唱で絶大級の魔術かよ!?」


 彼女はバリアを展開し、その炎から身を守る。


 バリアの外はまるで地獄のような真紅に染まり、バリア内の空気の温度も上昇し、まるでサウナのような状態へとなる。サルワの額から汗が止まらず、呼吸するたびに肺が焼けてしまいそうだ。


 そんな極度の酷暑世界の中、人の形をした影が炎を掻き分けて現れる。姿は分からない。しかし、この状況で現れる者など一人しかいない。アナトだ。


 アナトは槍を持っているようで、その槍をバリアに向けて強く薙ぎ払う。そして、パリッ!とまるでガラスが割れたような音と共に、いとも簡単にそのバリアは崩れ去っていく。


 一瞬でサルワの体が炎に襲われ、皮膚が燃えて肉が焦げる。


 「再生が……追いつかない!!」


 このままではまずい……どうこの状況を対処するべきか。と考えている最中にもその炎の中にいるアナトは動き出し、槍を構え、サルワに向けて鋭い突きを繰り出す。


 サルワはそれを咄嗟に躱し、反撃を繰り出す。


 そのアナトは強い力で周囲の炎を共に吹っ飛ばされ、真紅の世界が元に戻っていく。


 吹っ飛ばされながらも空中で態勢を整え、上手く地面に着地してみせるアナト。


 「モーション無しに物体を動かす力……やっぱり厄介だな。それに──」


 彼女はサルワへと目線を向ける。


 「はぁ……はぁ……!」


 支配の能力で火傷に、焼けた肺を一瞬で再生していく。しかし、サルワもあと一歩、押されていたらまずかった状況だったようだ。炎が掻き消え、温度が低下したというのに嫌な汗が止まらない。


 「あの回復力だ。でも、相手の魔力も半分以上は減ってるし、このままどんどん魔力量に多様な術で押していけばいけるな」


 そう言って、アナトは槍を構え直す。

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