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最後の砦 7

 もうボロボロの体。それは無駄な最後の足掻き……しかし、それでも調和神アフラの最期に足掻くその力は決して侮れない。


 どんな攻撃が来ても良いように身構えるアルウェス。しかし──


 「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 それは攻撃ではなかった。


 力強く床を叩き、地面に向けて莫大な量の魔力を送る。それはこの巨大な建物全体を揺らし、まるで地震でも起こっているような衝撃が奔る。


 一体、何が起ころうとしているのか。


 トーゼツとアルウェスは戸惑い、動けない。


 さらにその魔力は床を通って建物へ出て、神都全体へと渡っていく。それと同時に地震のような衝撃もまた伝染していく。


 冒険者連合に非難している一般人。街中で戦っている冒険者。死闘を繰り広げているアナトと支配の厄災であるサルワ。ただ破壊と狂気を振り撒く憤怒の厄災。


 全ての者がその衝撃に困惑し、恐怖していた。


 そして魔力は次に巨大な魔法陣を展開させる。そして、そのまま魔法陣の円外側からガラスのような壁が生えてきたかと思えば、ドーム型のバリアを展開させる。



 「へぇ、これはまた──」


 アナトはそのドーム型のバリアを眺め、直感で理解する。


 「奴らが外に出ないための結界、か」


 神術の領域……ならば展開できる者は一人しかいない。


 それと同時に悟ってしまう。


 あの社会、人界に接触をしなかった調和神アフラがこの結界を展開したということは──


 「おいおい、戦闘中によそ見とは、余裕だな!」


 ボンボンボンッ!と神都内にある建物が地面から浮き、アナトを押し潰さんと一斉に向かってくる。だが、アナトはそれを魔力の帯びた槍で同時に薙ぎ払う。


 「まだまだ、私には届かねェぞぉ!」


 今度はその槍を強く投擲するアナト。


 それは音速を超え、空気の壁を突破してソニックブームを起こす。空間を裂いて、まさに星の光のように真っ直ぐ、凄まじい速度で突き進み、サルワの胴体に直撃する。


 (ちぃッ!化け物め!!)


 そのように感じるサルワだが、胴体の半分が槍の攻撃で削れて肉塊となっているのに、彼女もまた化け物のような回復力を見せる。


 槍は方向を転換したかと思えば、ヒュン!と風を切りながらアナトの手元へと戻ってくる。


 「さぁ、まだまだ、本気を見せてくれ!」


 アナトの叫びと共に、サルワは魔力を高め、次の攻撃を行おうとする。



 「これ…で、アナタ達はこれで神都外へと出ることは……出来なくなり、ました」


 ざらざら、とその腕が砂のように崩れ落ちていく。


 視界もまた安定しない。


 「コイツ……残りの魂全てを魔力に変換したのか!」


 神の魂を取り込もうとしていたアルウェスは驚きながらも、その声には激昂が混じっていた。


「全てではありませんよ。魂はイェツィラー……貴方の分かるところではルーパ…より分かりやすく説明するのであれば概念世界へと還るための……余力は残って、います」


 「だったら、その魂が完全に概念世界(ルーパ)にいく前に──」


 アルウェスは急いで鎌を調和神アフラめがけて振り下ろす。しかし、それはフッと、まるで空を斬ったかのような感触で刃が通り過ぎていく。


 「ちぃっ!間に合わなかったか!!」


 もうそこにアフラの魂はなかった。


 肉体、だったモノ。人の想い、魔力のかけらが砂となってそこに漂うだけであった。


 そうして神代の王であり、人を万年長く導いてきた調和真アフラはこの世界から完全消滅した。

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