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最後の砦 6

 アルウェスは取り込んでいる魂を燃料としてどんどん魔力へと変換していき、それを後先考えずにただ放出し、泥をはじいていく。


 (くッ!全盛期以下の出力とはいえ、この神術さえも防ぐというのですか!?)


 調和神アフラはアルウェスとは反対に、どんどん魂が消耗し、肉体の崩壊が始まっていく。


 (肉体を維持するエネルギーも……足りなくなってきているのですね……)


 アルウェスも言っていたが、アフラの肉体はエネルギーで構成されたモノ。そして、そのエネルギーは人間の信じる心、想いによって発生したモノである。


 だが、現代においては調和神アフラの存在を尊敬、畏怖する者はいても、彼女が本当に世界を創造したと考えている者はいない。であれば、彼女の存在がどんどん弱まっていくのは当たり前である。


 彼女が世界の王として君臨していた、まさに全盛期である神代の頃であればアルウェスなど敵では無かっただろう。神術(しんじゅつ)〈ブンダヒシュン〉もこの星を覆う規模で展開出来ただろう。だが、今ではこの部屋の規模で展開するのがやっと。


 「くッ……ここまで…ですか…………」


 気づけば、泥は完全に消え去り、部屋が元に戻っていた。


 「どうやら力を使い果たしたみたいだね!ハハハッ!人から望まれて生まれた神が、人によって殺されるなんて、皮肉な話だな!」


 アルウェスは嗤い、鎌を持って調和神アフラへと歩いて接近する。


 「だけど、こっちもかなり危なかったよ。千人以上の魂を取り込んでいたのに、もう十人分の魂しか無いや。はははッ!全盛期以下なのは知っていたけど、ここまで戦えるなんてな!!」


 近くで彼女の体を見る。全身にヒビが入り、そこからエネルギーが光として漏れていた。もう攻撃する必要もない、触れるだけですぐに崩れて消え去りそうなその肉体。


 「さて、その魂、刈り取って俺のものにしてやる!」


 と鎌を大きく振り上げたその時


 「アルウェス!!」


 背後にあるエレベーターから響く一人の声。


 それをアルウェスとアフラが知っていた。


 ゆっくりと振り返し、アルウェスはその少年を見る。


 神に祝福である『職』を授かることなく、しかし神々の計画、その主柱にされているその少年は──


 「来たか、トーゼツ。だけど、遅かったね!調和神アフラはここで死ぬ」


 トーゼツは自分の目の前に広がっている光景がとても信じられなかった。


 あの超絶な魔力量、人智を超えた技術を持った調和真アフラがアルウェス程度の相手に負けて、追い詰められているというその事実が、受け入れられなかった。


 「聞きなさい、トーゼツ」


 目の前に死が迫っている。そういうのに、調和神アフラの眼はまっすぐトーゼツを見ていた。


 「私はここまでのようです。しかし……負けたままでは終わらない。あとはアナタと…アナトにベス達に任せます!!」


 調和神アフラはその身に残る力を振り絞る。

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