最後の砦 3
調和真アフラはアルウェスの説明を聞いた上で、余裕の表情であった。
「面白い」
刈り取られた右手が一秒も経たないうちに生成し直し、アフラは何事もなかったかのように続ける。
「厄災の力を持っていようと、持っていなかろうと、貴方は一人の人間。それがここまで戦うとは、人間の時代がすぐそこまで来ているという証拠。それが私は嬉しいですよ」
「はっ!嬉しいねェ……そんな感想が来るとは思っていなかったけど、やっぱ神を相手にするのはこっちも面白くて助かるよ!」
アルウェスは再び大きく鎌を構えて駆け出す。それに対し、調和神アフラは既にこね回し、作っていた魔力球をアルウェスに向けて容赦無く放つ。
アルウェスの持つ魔力量を軽く超える規模の魔力球が彼に襲い掛かる。
「しかし、やはり人間レベル。分かるでしょう?戦いというのは色んな要素の上で成り立っている。技術、経験、才能……。けれど、圧倒的な力の前ではそれは意味を成さない」
争いで考えればより分かりやすいだろう。
どんな戦術、どんな優秀な指揮官が居たとしても、圧倒的な数で来られればそれは意味が無い。万いる軍勢に少数で勝つ争いは歴史上、無いとは言わないがほぼ、ありえない。それほどまでに調和神アフラとアルウェスの魔力量差というのは戦いの勝敗を決めてしまうほどのものであった。
しかし、アルウェスは止まらない。
向かってくる魔力球を、鎌をくるりと素早く回し、遠心力なども利用しながらなんと綺麗に切断してみせる。それはまさに調和神アフラの予測外の事であった。
「言っただろ?俺の能力は成長しているってね!」
その勢いで調和神アフラを頭から胴体に向けて真っ二つにしようと斬りかかる。
ザンッ!と斬れた感触のあったアルウェスだったが、しかしアフラはギリギリの所で避けたらしく、顔半分が裂けた状態になっていた。
人間であれば脳にまで達しているだろう傷なのだが、やはりそれはエネルギー体であるようだ。脳負傷による意識の低下などの様子は一切見えない。また中身は見えず、そこから漏れ出るのは大量の魔力であった。
そして、左目だけになったその眼で、アフラは視る。
「魔力量の……増大?」
アルウェスから感知できる魔力量が明らかに数倍まで跳ね上がっている。
まだ自身の魔力量には及ばない。しかし、足元までは迫ってきている。
再び争いに例えるとするならば、万対百の一方的な虐殺から万対千……より詳細に言うならば一万対三千ぐらいには成っている。勝ち目はまだ薄い。しかし、抗戦ならば可能。
「クッ、クククッ!ははははははッ!!!何が起こっているのか、分からない感じのようだね。これだけじゃあ終わらないぞ、調和神アフラ!」
アルウェスの魔力量がさらに伸び続ける。
それは人類最強のアナトを超え、神の領域へと到達し始める。
「死の厄災、魂を刈り取る…そして、成長………」
調和神アフラはアルウェスの口から出た情報を頭の中で分析し、すぐに何が起こっているのか。その答えへとたどり着く。




