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刃の厄災 4

 ミトラもまた、ハハッ、と枯れたような笑いが口から零れ出る。


 「まさか、敵からも『諦めない』なんて言葉が聞けるなんてね」


 あんなに不安になっていた自分を励まし、鼓舞させてくれた言葉。それを、敵からも聞くことになるというのは、不思議なものである。


 そうだ、諦めない。


 前に向かって、ひたすら進め!


 彼女は気持ちを切り替える。先ほどまで、相手の圧倒的な力、速度に驚き、身に喰らって、気圧されてしまったが、そんなもの、関係ない。


 「私なら……行ける!」


 ダっ!と強く地面を蹴り上げ、刃の厄災との距離を一気に詰める。


 刃の厄災はこちらの動きを完全に見切っているうえ、彼女以上の速度で攻撃を開始する。


 彼女が剣に魔力を送り、助走をつけた突きを繰り出すのに対し、刃の厄災はその巨大で、キロを超え、トンまでありそうなその大剣で下から上へと大きく斬り上げる。さらに、大剣は遠心力も加わり、さらに莫大な力となってミトラへと襲い掛かる。


 しかし、ミトラはその攻撃をするり、と避ける。


 (我の攻撃を見切ったのか!?)


 先ほど、一撃を与えた時よりも、良い動きであった。ゆえに、刃の厄災はそのように思考し、判断したのだが、実際には彼女は厄災の動きを捉えることは一切、出来ていなかった。


 では、どうやって避けたのか?


 それは二つ、理由がある。


 一つは、相手の腕と剣をしっかりと観察したことである。やはり、厄災であっても、次の一手のための動作や向きがある。例えば、今、行った下から上へと斬り上げるとなれば、剣先は下向きで、腕は少し力を緩めている。


 それさえ分かれば、どんな動きをしてくるのか多少の予測は可能だ。


 そして二つ目、これに関しては理屈ではないと同時に、一言で説明できてしまうもの。


 勘である。


思考せず、自分の戦士と獣としての本能だけを頼りに動くそれは、一般的には信頼出来るものではないだろう。しかし、常に戦いに身を置く冒険者である彼女だからこそ上手く働くものであった。


 「っりゃぁぁぁ!!」


 彼女はそうして刃の厄災に向けて鋭い突きを放つ。


 魔力は込められているものの、剣術ではない。これほどの力であれば、ある程度の魔物は一撃必殺の攻撃となって殺せているだろう。しかしながら、この化け物相手には、やはり深いダメージは与えられなかったようだ。


 カンッ!と鎧と刃がぶつかる音が響き、鎧がへこむ。しかし、それだけ。


 「ふん!」


 振り上がっていた大剣を、今度は強く振り下ろし、ミトラへと攻撃する刃の厄災。


 それを同じ方法でミトラは避け、今度は剣術を唱え、攻撃する。


 「上級剣術〈瞬時断絶〉!!」


 それは、見えない高速の斬撃。


 一秒……いや、ゼロに近いスピードで相手を斬るその剣術を、何度も続けて発動する。


 それは、刃の厄災に防御も、反撃も許さないほどの速度。


 彼自身にダメージは通っていない。しかし、どんどん鎧に傷が入り、また斬った跡、そこから奴の真っ黒な、明らかにこの世の生物ではない肉体が見え始めていた。

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