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出会い 3

 次の日……。


 朝の八時に起きた眠い目をこすり外へ出てトーゼツは軽く剣の素振りをすることで体の覚醒を促す。それから軽く朝食をして身支度を済ませるとそのままギルドへと向かう。


 ギルドに到着する頃には十時になっていた。


 メユーとは定期依頼に、普通の依頼があったりする日。そして、何もすることが無い日であってもとりあえず十時にギルドで毎日集合しよう、という約束をしている。


 しかし、今日はなんだかいつもの街とは違う雰囲気が漂っていることに気づく。


 「ん?」


 しかし、違和感を感じていてもその正体が何か、すぐに気づくことはなかった。いつも通り市民は仕事先へ向かったり、買い物へ出ている。また午前中ということもあり、屋台の人たちは営業に向けて準備をしている。何らおかしくはない日常。


 しかし、何かが違う。


 歩き始めて数分、ようやくトーゼツはその違和感が何なのか、突き詰める。


 「兵士が多いな」


 そう、いつもなら通常通り国境付近を警備しているはずの兵士たちが都市内で歩き回っているのが確認できる。いや、これまでも日中、街中で兵士を見ることはあった。だが大抵の者たちは仕事をしているため、休憩中であったり、非番の兵士ぐらいしか街中では見かけない。


 しかし明らかに今日は兵士の遭遇率が高く、また大通りを走っている馬車も兵士を乗せているものが多い。どうやらほかの都市からやってきた者たちみたいだ。


 「何かあったのか?」


 本当に珍しいことだ。


 だが、昨日、商人が魔物に襲われていた。国境に近く、また一日に何回も兵士が警備のために通る道だ。スライムやゴブリンといった小型の魔物や猪、鹿といった獣が迷って現れるぐらいだ。しかし、あんなにデカい魔物が現れたのは初めてだ。


 過去にも何度かあったかもしれないが、トーゼツの知る限り初めての事例。


 「何か近くの山や森の生態系を破壊するようなことがあったのかもしれないな」


 例えばドラゴンなどの大型魔物がやってきた、などだ。


 この辺りでは珍しい事例だが、世界中という大きな目で見れば何度も見られる話だ。ドラゴンが近くの山に住み始めた結果、その山の生態系が崩れてしまい、一部の大型の魔獣が村や町にまで現れ田畑や人を襲い始めた、などだ。


 「まぁ、本当に何かあったら、ギルドの方でも話題になっているだろうな」


 そう判断してとりあえずその歩みを止めることなく目的地へと向かう。。


 そうして、トーゼツはギルドの前に到着する。


 (兵士側は忙しそうだったが、大抵ドラゴン討伐なんかは国の仕事だし、今日はまだ落ち着いているだろうな)


 そんな気楽な気持ちでギルドのドアへと手を伸ばす。


 もちろん、本当に危険な魔物が出現したとなれば冒険者にも依頼される可能性はある。が、そういうのは国でも対処しきれなかった場合だ。そうなると、国とギルドの共同討伐という形になって、何人もの有力冒険者を主軸に戦うことになる。


 また、冒険者の中には世界に名を轟かせるパーティだっている。そういう場合は、そのパーティに最初から依頼して被害を抑えるということもある。


 だが、残念ながらこの国にそのレベルの冒険者パーティは今いない。なので確実に強い複数のパーティで挑むことになるだろう。


 (俺とメユーも呼ばれるといいなぁ)


 なんて思ってドアを開ける。


 そこで広がっていた光景は―


 「おっと、これは……?」


 ギルドで働いている者たちが大慌てであっちこっち走っている。


 予測が外れてしまった。まさか、もう冒険者ギルドの方でも慌ただしくなっているとは。


 「何が起こっているんだ?」


 これは誰かに聞かないと分からない話だ。だが、ギルド内部の人間はあちこち書類を持ったり、また国の兵士と話し合っている。


 また冒険者もほとんどが困惑している様子であった。しかし、一部の冒険者は何かしらの情報が回ってきているらしく、仲間に説明していたり、ギルドの人間や兵士と同じく慌ただしくしている。


 「おっ、ようやく来たか」


 そのようにトーゼツに話しかけるのは、メユーであった。


 「おいおい、一夜にして何が起きたんだ?街全体が慌ただしくないからまだ知れ渡っていないのかもしれないが、さすがに異常が起きていることぐらいは分かる。お前は何があったのか、知らないか?」


 「ちょうど三十分前ぐらいにラジオ放送でとんでもないことが報道されたのよ」


 「報道?」


 大抵、国営のラジオは首都から発信されているもので、報道内容もそのほとんどが首都内部で起こった事件や政治関連の話が多い。仮に地方の首都でも有効な報道内容といえば天気ぐらいである。だが、その天気も農業者ぐらいが活用してるぐらいなもんだが。


 「この街に十五の厄災、そのうちの一つが向かっているって話よ」


 「なんだって!?」


 トーゼツは声を荒げて驚きの声をあげる。


 厄災とはとんでもないものがまたやってきているものだ。



 十五の厄災。


 それは、まだこの世界に神々が支配していた頃の話まで遡る。


 神と言うのは、この世界に降臨した人間を正しき方向へと導いてきた存在である。彼らは人間より優れた知識や力を持ち、それを以て世界を支配していた。


 しかし、彼らはこの世界を人間へと明け渡し、その多くが別の場所へと旅立ったとされている。


 これらの時代を俗に神代しんだいと呼ばれている。


 これらはもう一万年近い昔の話とされており、本当に神がいたという文献や遺跡などは少なく、当時の神々がどんなものであったのか。分かっていない。また、神の存在は実際にいる認知されているが、本当に古代では神が世界を支配していたという時代があったのかと疑う学者も少なくはない。


 だが、確実にそのような時代があっただろうと多くの学者が認めざるを得ない証拠が一つ存在している。


 それが、十五の厄災である。


 神代の初期、人が世界中にいるように、世界のあちこちに神がまだ居た頃。それは同じように生まれ堕ちてきたという。人の悪性によって生まれた邪神。怒りや悲しみ、恐怖などの負の感情を糧に成長した世界を本能のままに破壊し尽くす最恐の存在。


 それらは神々によって倒されたものの、殺すまでは出来なかった。というのも死ぬ直前に邪神は自分自身を魔術によって封印したのだ。


 封印は本来、倒せない相手を半永久的に動きを封じ込むものである。例えば、石像に身体を変化させるなどが例としてあげられる。だが、それは封印されている間、殺せなくなるという効果もつく。つまり、暴れることは出来ないが、殺すこも出来なくなるという、お互いの不可侵という条件を元に可能にする魔術なのである。


 それを自分自身にかけることで、邪神がこれから数百年、数千年この世界で脅威を振るうことはなくなった。が、あと一歩までの所で殺せなくなってしまったのだ。


 さらに邪神は封印の外にまで影響を及ぼすほどの狂気を振りまいており、神々すらも近づけなくなってしまったという。


 そして、その狂気の中で生まれた悪魔、それが十五の災厄。


 彼らは合理性はない。ただ、邪神と同じく狂気を振りまきながら、自由気ままに破壊しながら世界を徘徊しているだけである。


 まさに、竜巻のようなものである。突然現れては家屋や人を襲い、気ままに風に流され、消えていく。竜巻には破壊の意志はない。ただ、そこにあるだけで何かを破壊するだけだ。それと同じ。そこに街があっても厄災は進み続ける。そこに国があっても、破壊し尽くす。ただ、それだけの話なのである。


 そして、神代の時代は終わったとされているが、まだ完全ではないと多くの人々は思っている。この厄災を払い、邪神を討伐するまで真の人間の時代は訪れない、と。


 その十五の厄災はまだ六つしか討伐されておらず、九つの厄災が生きている。

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