好転 4
少し時間が経ち、場所が変わる。
そこはギルドの三階にある会議室。本来では年に一度、行われる地方支部長に副会長兼特殊冒険者のアナト、そして創立者であり会長を務める調和神アフラと言った上層部によって使われる会議室だ。
もちろん、許可を出せば誰でも使えるのだが、冒険者は任務遂行がメインであり、話し合いなどの場を設けることはあまりない。ギルドスタッフも任務依頼に、任務の報告書、新たな冒険者などの手続きと事務が多く、借り出されることなどそうそうない。
その広く、重要な会議室のテーブルに広げられているのは神都の全体を描いた地図。そしてそのテーブルを囲むのは、アナーヒターを中心に選ばれた計画立案と同時にリーダーとして動いてもらう者たちであった。
特異課の課長であり、剣聖ミトラの師匠であるベス。
「ったく、ようやく状況が進展すると思ったら俺が選ばれるのかよ。ったく、めんどくせぇなぁ」
そう言ってベスはスキットルの中に入っている酒を口の中へと放り込む。
「おいおい、呑むならワシにも一杯、くれんかのう」
そう言うのは、ギルド連合本部で最も年長者とされている魔獣害対策課の課長であり、弓聖の職を持つ男ウェルベス・コットロルであった。
「まったく、これだから魔術を戦いに使う野蛮人は。これだから冒険者と組むのは嫌だったんだよ」
そのように文句を言っているのはギルド外部に人間であり、魔術学連合の副会長を務めている術聖、スキーリン・ウォルブラッグ。
「あ……えっと、私はここに居て良いのかな?」
そのように自分が場違いなのではないか?と不安そうな声色で述べるのはテルノドであった。
「私とアンタはアフラ様の命令で厄災の研究をしていたんだから、頼りにされるのは当たり前のことよ。ったく、アンタはもっとどっしり構えてよ!」
そのように怒鳴るのはファールジュである。
「あなた方二人はともかく、私が出来ることは怪我人の治療だけですわ。今も多くの人たちが傷ついて、私を待っている人たちがいますの。早くしてくれませんか?」
落ち着いてアナーヒターに言うのは子供ではないのか?と思ってしまうほどの背の低い身長。しかし、医神とも呼ばれている術聖の一人のエイルだった。
「あれ?他にも三人ほど呼んでたはずだけど?」
そのようなアナーヒターの疑問に答えるのはべスであった。
「さぁな。見当たらないし、もしかしたら救助活動してるか。化け物と戦っているのか。はたまたどっかで戦死しているか。まっ、これ以上、時間を無駄にするわけにはいかないだろ?さっさと作戦立案して、実行して、これ以上、被害拡大を防ぐとしようぜ」
べスの言う通りだ。
居るかどうかも不明の相手を待ち続ける時間など今はないのかもしれない。
今もやる気はないし、期待に応えるつもりもないのだが……アナーヒターがまとめ役として口を開く。
「そうだな……じゃあ、始めるか。民間人避難及び敵殲滅作戦立案を!」




