再戦 8
ガチガチとサルワのセプターとアナトの槍が火花を散らしながら強くぶつかり合う。『支配』の力を使って槍に込められた魔力を乱すことで威力を弱める。だが、アナトの持つ圧倒的に膨大な魔力の前ではそんなモノは無意味のようだ。すぐさま拮抗状態が崩れ、サルワはどんどん追い詰められていく。
しかし、そんな事すぐに分かっていた。
サルワが欲しかったのは一秒という短い間でも拮抗状態をなんとか作ることであった。
この間に『支配』の力を用いて腹に槍で開けられていたどデカい穴を治癒で塞ぎ、態勢を立て直す。そして、サルワは地面へと意識を向けると、またもやアナトの足元にある地面から剣が勢いよく映え伸びる。
アナトは槍を一旦引くと自分に向かって地面から生え伸びる剣を軽く避けていく。何度避けても、別の場所から剣が伸び、何度もアナトに襲いかかる。
「剣の方に集中がいきすぎてないかい!!」
そこに、いつの間にか背後に回っていたサルワがセプターを構えて殴りかかる。しかし──
「ッ!」
頭に衝撃が奔る。その衝撃の入った箇所からツー、と何かの液体が垂れ、頬を伝って地面に落ちる。
それは赤くて、熱い大事なモノ。
そして、視界の端に映るのは自分を攻撃したであろうモノ。アナトの持っている魔術の杖であった。
「同じ手に引っかかるお前は学びが足りていないようだけどな!」
アナトはそのまま強く槍で追撃しようとしたが
「っらァ!」
ボンッ!とアナトは抵抗できない力で吹っ飛び、吹っ飛ばされる。
(危なくなったらこれで必ずこれか!)
攻撃力はないし、脅威ではないと思っていたため何も考えていなかったが、何回もこうしてやられるとなると一体何を『支配』して吹っ飛ばしているのか。その力の正体を知り、防ぐ手段を見つなければ。
空中でそのように考えているその瞬間──
「なッ……!」
巨大な影が自分を覆ったかと思った次の瞬間にはその巨大なナニカがアナトを押し潰そうとする。
「これには耐え切れるか?」
そうしてサルワが操っているのは、なんと街の一部。
周辺に建てられていた家、建物、また舗装された道路の瓦礫。
それらがサルワの意思によって動き出し、宙を舞う。
「まだまだいくぞ!」
ドンドン街を壊し自分の数倍の大きさ、重さのある建物を操り、まるで自身の一部のように自在に操作しながらアナトを押し潰そうとする。
「さすがに…はぁ、はぁ……死んだか?」
さすがのサルワでもかなりの労力なのか。息切れし、たまのような汗をかきながら呟く。
しかし
「この程度か?」
建物が一気に吹っ飛び、その爆発のような衝撃の中心にいたのは無傷のアナトであった。
「だったらこうだ!」
今度は吹っ飛んでいく建物、瓦礫、レンガ……その全てが剣のような刃に変化し、アナトに向かって突き進んでいく。が、それもまた無意味なようだ。
アナトは魔力を纏っているだけ。
戦闘中は常に魔力を纏い、身を守る。戦士の基本だ。
だが、魔力を纏った攻撃は魔力の膜を簡単に破るし、魔術による攻撃を無力化は出来ない。それでも魔力の無い攻撃は完全に無効化できるため、やはり戦士の基本とされている。
サルワの力で生まれた刃も、もちろん魔力を纏っている。なのに
「刃が通らないか……!」
アナトの身を膜のように覆う魔力が、刃を受け止めている。
「良いね、久しぶりに楽しくなってきたよ」
余裕の表情をサルワに見せつける。
「そのツラ、すぐにぶち壊す!」
サルワとアナトの再戦は、さらに熾烈を増していく。




